なぜ女友だちとは、こんなに離れがたく、それでいて付き合いづらい存在なのか? プレジデント社新刊『女友だちの賞味期限』の出版にちなみ、各界で活躍する方々に「女友だち」について語っていただくインタビューシリーズ、第5回目は、女子高生ビジネスのパイオニア、中村泰子さんです。中村さんは、1986年に、女子高校生の企画集団「SCAT CLUB OF JAPAN」を設立。この集団が後に、女子高生の感性をマーケティングに生かす画期的な調査・セールスプロモーション会社、ブームプランニングに発展します。現在は就学前の子どもから小・中・高生、大学生、OL、主婦にもネットワークを広げ、多くの企業で女性をターゲットにした商品開発にかかわっています。
――『女友だちの賞味期限』を読んでいただいてのご感想は?
私は田舎でのんびり育ち、東京に来てからもずっと周囲に恵まれて、女友だちとのバトル経験もなく友情についてちゃんと考えたことがありませんでした。昔のことはすぐに忘れてしまうたちですし……。それがこの本を読んで、幼稚園の頃から今までのいろんな友だちの顔が浮かんできてびっくりしました。その時々の友だちと過ごした場面や感情が思いだされ、記憶がよみがえった感じです。私にとってこの本は、女友だちとの関係を客観的に思い返させてくれました。友達についてあらためて考えたり、自分ツッコミしたりしながら読みました。
――環境や立場の異なる友だちと友情を続けるうえで難しさはありますか?
ずっと仕事をしている人と、結婚して子どもがいる専業主婦とは話が合わないという人もいますが、私はそんな風に感じたことは一切ないです。子どものときから、年齢も性別もタイプも全然関係なく、放射状に友だちがいるタイプでした。今でも、子育て中の専業主婦と話し込んだりします。彼女の悩みが子供で、こっちは仕事の人間関係だとしても、突き詰めると、根本的な悩みは似ていたりして、考えていることはそうは違わない。私にとって知らない世界の話が聞けるのは興味深くて参考になるし、環境が全然違うからこそ、お互い気を遣わないで、いろいろ話しやすいということもあると思います。
何十年かぶりに再会して、友情が復活するパターンも少なくありません。「友情を続ける」という意識がそもそもないですね。人に対する執着や独占欲があまりないからかもしれません。友達といってもそれぞれの人生、忙しい時期があるわけで、その時々でタイミングのあう友達がいてくれることが大事なのかなと思います。
――「放射状の付き合い」とは……?
人に対して好奇心旺盛だから、性格やタイプが全然違う人が放射状にいて、いろんな人とつきあっているイメージです。クラスで嫌われている子や、性格が正反対の友達がいると「え~っ、あの子とも仲いいの!? 不思議~」なんて言われることも多かったけれど、その子の中に自分が好きだな~と思える部分を見つけられたり、興味が持てるところがある相手ならどんな子でもOKでした。だから誰とでも付き合えると思われがちで、自分でも八方美人なのかな……とか思うこともあります。あっちにもこっちにもいいを顔する、イソップ物語に出てくるコウモリみたいな(笑)。これっていいの? と思ったこともありました。とはいっても、本来私は全然社交的ではないですし、特定のグループに属すことはありません。束縛されるのが嫌いなので好きなグループには好きなときにだけ入れてもらう。
実は好き嫌いが激しいんですよ。基本的に自分が好きだなと思えるところだけしか見えなくて、それが見つかるとあとはどうでもいいという、ノーテンキで自分勝手なつ付き合いい方をしているのかもしれません。放射状の付き合いで大事にしていることは、必要以上に踏み込まない距離感です。それから、自分が嫌いな人とは出会わないように努力する。毎日、イヤな人に会いませんようにとお祈りしてから寝ているぐらい(笑)。居心地のいい状態を維持するには、なるべく嫌な人とは触れ合わないのが一番ですね。
――中村さんのお仕事の基本は、女子高生の話を聞くことですよね。人の話を聞き出すのは得意ですか?
聞き出すのが得意というより、話を聞くのが好きなんです。興味のある相手に対しては、気がつくと「えっ、なにそれ!? なんでそうなの? すごいね!!」を連発しています。自分にとって面白い話をされると素で大喜びするたちなので、話しやすいのかもしれません。口が堅いと思われているのか、「そんなことまで言うんだ」と驚くぐらいの秘密を話されることもよくありますね。1対1での会話が深まると人間関係は深まると思います。マーケティングをする上でも一人一人に集中した方が個人の意識や本音が聞きだせるんです。
――中村さんにとっての女友だちとはどんな存在ですか?
なんでも話せて、ストレスを発散させてくれて、元気にしてくれて、良いアドバイスをくれる「人間サプリ」です。最近、全然違うタイプの親友たちを紹介しつつ、新しい構成で会うとさらに楽しく得することがわかりました。初めて会った友だち同士が、これまで私が聞いたこともない趣味の話で意気投合したりして、自分も知らなかった友だちの一面を見られて面白いんです。女友だち同士が仲良くなっていれば、例えば田舎の親友が上京したとき、私が会えなくても東京の親友が会ってくれたりして助かるんですよ。私の愛する女友だちを、どんどんシャッフルして一緒に会うと、シナジー効果で1対1では得られない発見があります。
今も、10代から70代までいろんな女友だちがいますが、仲良くなるタイプって年齢は本当に関係ないですね。幸せの輪をどんどん広げる力があって、将来も末永く付き合えるのが私にとっての女友だちかなと思います。
山口県出身。1986年、企画集団「スキャットクラブ・オブ・ジャパン」を設立、女子高生ビジネスのパイオニアとなる。88年、株式会社ブームプランニング(http://www.boom.co.jp/)を立ち上げ、現在全国約1万人の女子高生を中心としたマーケティングやセールスプロモーションを展開。未就学児から小・中・高生、大学生、OL、主婦にネットワークを広げ、さまざまな職種で企業の商品開発にかかわる。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代 東京・女子高生の素顔と行動』がある。