■編集部より指令

ひと言に「女」といっても、いろいろ。職場を見回すと、未婚、DINKS、子持ち、シングルマザーといろいろいますし、世代も幅広く、雇用形態別に見ても、正社員、契約社員、派遣社員、パート……とさまざまです。

「女性は扱いにくい」とか「子どもがいるとね……」といった男性上司や同僚からの偏見もいただけませんが、立場やモチベーションが異なる女性の間でうずまく「妬み」や「批判」はもっとたまりません。

そんなネガティブな感情を向けられてもものともしないメンタルタフネスを身につける方法、あるいは、そもそも妬みの対象とならないで済む必殺技がありましたら教えてください。

■佐藤留美さんの回答

男より10倍怖い?「女社会」でサバイブできる人の特徴 -職場の人間関係・女の言い分
http://president.jp/articles/-/11836

■大宮冬洋さんの回答

恩恵を下々に分け与える

結論から言いますと、子持ちの正社員女性(夫も大企業の正社員)に対する嫉妬は防ぐことができません。佐藤さんがアドバイスする「自虐トーク」「スキを見せない」といった手段は有効だと思います。でも、どんなに注意を払っても「あの人の存在そのものが羨ましい、妬ましい」という人間の感情を抑えることは困難です。

嫉妬されつつも批判の対象にならないために、佐藤さんの勧める防御策に加えて、攻めの手法も検討しましょう。「なんであんな女がダンナも子どもも正社員の座も手にしているのか」という妬みの対象から、「あんなにステキな女性ならすべてに恵まれていて当然。ずっとお友達でいたいわ」という憧れの存在へと変身するのです。

いわゆる「育ちがいい」女性は憧れの存在になりやすいと思います。日本人は権威に弱いので、「実家が江戸時代から続く老舗で皇室御用達」とか「小学校から高校までお嬢様学校育ちで父親は有名企業の社長」といった先天的お金持ちワールドには素朴な憧憬を抱きやすいですよね。そこを最大限に利用しましょう。

自慢するのではなく、恩恵を少しだけ下々の民に分け与えることがポイントです。豪勢かつ上品な実家に招待しておいしい物でも食べさせてあげたら、民の大半はあなたのファンになります。同じ職場で息を吸っているだけで光栄で、すごく羨ましいけれど生まれ変わらないと私には無理! と悟らせてください。

名家やお金持ちの生まれではなくても、「女優並みの美貌」「すごすぎる人脈」「抜群のファッションセンス」「圧倒的な仕事能力」なども憧れ要素になるでしょう。ここでもポイントは恩恵を周囲に分け与えること。自分にメリットをもたらすものを悪く言う人はあまりいないからです。

「中途半端」が批判の対象になりやすい

批判の対象になりやすいのは、「生まれ育ちも顔立ちも能力も中程度なのに、ガリ勉して一流大学に入って稼ぎのいい男を学生時代につかまえて、正社員になり、さっさと出産した女性」ですよね。自分にも手に届いたかもしれない現実が目の前で歩いているのだから、気分が悪いのは当たり前です。嫉妬という恥ずかしい感情をこの私に抱かせる女! それだけでも十分に腹が立つでしょう。時短制度などをフル活用したら嫌味攻撃の的になるのは必然です。

嫉妬され、いわれのない批判と悪口の対象になる――。残念ながら「持てる者」が直面する現実です。ある程度は仕方ないとあきらめて、受け流す強さも必要だと思います(露骨に無視をすると「お高くとまっている女」とさらなる批判を浴びかねないので、たまには傷ついているフリをしたほうがいいかもしれません)。

僕は女性ではありませんが、嫉妬の感情は人一倍強いので、しつこく忠告させてください。自分の状況を嫉妬しそうな人からは物理的に距離を置きましょう。視界に入るだけでダークな気持ちにさせてしまうのだから、離れるのがお互いのためなのです。

彼女はあなたという人間が嫌いなのではなく、あなたのスペックに引け目を感じているのですから、悲しむ必要はありません。そっとしておいてください。触らぬ神に祟りなし、君子危うきに近寄らず、です。いずれ彼女に結婚や出世などの幸運が訪れたら、その翌日から仲良くなったりするかもしれません。

嫉妬よりもっと怖いのは「恨み」

最もやってはいけないのは、嫉妬が原因であなたの悪口を言った相手を悪口でやり返すことです。我慢がならないほどの侮辱を受けた場合は上司や人事部に相談するべきで、相手と同じ土壌で勝負をしてはいけません。人脈と実力を駆使して勝利を収めたとしても、逆恨みされかねないからです。弱者が強者に対して抱く恨みは、すぐには晴らすことができないだけに強烈かつ深刻なものになります。

本当に怖いのは「妬み」ではなく「恨み」だと思います。妬みによる被害は、職場で嫌味を言われたり根の葉もない噂を立てられたりする程度ですよね。軽度かつ一時的なもので、耐えられないほどではない。

一方で、恨みが引き起こす厄災は計り知れません。一般に、ひがみっぽい人間は恨み方も半端ないですよね。仕事中だけでなく、プライベートの時間や家族まで攻撃の対象になる恐れがあります。しかも恨みは長期間にわたります。どちらかが会社を辞めた後にも一方的で陰湿な復讐が続くかもしれません。いやー、怖いですね。ぜひとも回避しましょう。

以上をまとめます。「妬みの対象から憧れの存在に変わる可能性を検討する。無理ならば、嫉妬しそうな相手からは距離を置き、恨まれることだけは絶対に避ける」。恐ろしい野生動物に接するような心構えですね。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/