病院の規模より通いやすさで選ぶ

女性雑誌などで妊娠したい人向けの特集があると、よく「産婦人科を受診しましょう」と書いてある。婦人科疾患があると妊娠しにくくなることがあるので、これは大切なポイントだ。でも、一体どんな産婦人科に行けばいいのだろう? 女性さえ受診していれば、男性は何もしないでいいのだろうか?

まず、産婦人科に行く「目的」について頭を整理しておこう。妊娠したい女性が産婦人科に行く場合、目的はふたつに大別できる。

1. 一般的な健康維持……すべての女性に必要で、生涯定期的に続けたいこと
2. 妊娠力の検査……不妊が心配な時に必要

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目的別・産婦人科のかかり方

1番目は、比較的どの産婦人科でも対応してくれるが、できるだけ自分が診てほしいことに力を入れている、よく説明してくれる医師を探そう。「大きな病院が一番よい」と思われているが、診療時間が短いので仕事をしていると通院が大変かもしれないし、手術を受けるわけではないので病院の規模は必ずしも重要ではない。開業医の営むクリニックは夜間診療など通院の配慮をしているところもある。

一度、自分が通院可能な範囲にどんな産婦人科があるかをインターネットや口コミで調べて、実際にかかってみよう。

定期健診がねらい目

産婦人科には、別に病気にならなくてもかかることができる。「婦人科の病気がないかどうかを調べたい」と言えばいいだけで、それは立派な受診理由だ。ただ保険適用とならないかもしれないので多少は費用がかかるかもしれない。

産婦人科によっては「ブライダルチェック」などと名付けた検査のパッケージを作っているが、特にそうしたものがない施設でも検診はおこなうのでこのパッケージの有無は気にしなくてもいい。「ブライダルチェック」の検査内容は各施設が独自に決めたセットで、統一基準などはない。

頸がん検診などの定期検診は、経済的に地域の産婦人科に行くチャンスなので逃さないようにしよう。そして、せっかく行くのだから、ついでに超音波検査などで子宮や卵巣の全体的な健康状態も診てもらうといい。

生理痛など何か日頃気になっていることを相談する場合は、一般的に保険を使って検査できる。本当に病気があったら治療は早い方がいいので、できるだけ早く受診したい。

不妊の原因を調べたいなら専門のクリニックへ

2番目は、すでにパートナーがいて「私たちは自然妊娠ができるのだろうか」という不安をぬぐうために産婦人科へ行くケース。この場合はカップルで不妊の検査を受ける必要がある。

不妊検査とは、妊娠に関わるホルモン、生殖器などを調べるいくつかの検査の総称。こちらは、一般的な婦人科検診とは別物だと考えよう。女性が毎年きちんと婦人科検診を受けて「異常なし」と言われていたとしても、それは、妊娠力を保証するものではない。

不妊検査は、妊娠しようとしているのになかなかしなかったカップルが受ける。大体1年で8割のカップルが妊娠するので、それくらいの期間が目安になる。また、女性の年齢が30代後半もしくは40代なら、不妊治療をしている間に時間切れにならないように少し急ぐことにして、大体3~6カ月を目安にする。

ただ、妊娠できるかどうかを調べるのは、実はなかなか難しい。精液検査で明らかに精子が少ないとか、女性の卵管がどう見ても詰まっている状態ならわかりやすいが、実際は多くの人が原因はまったくわからないまま不妊治療に入っている。

このように不妊検査は難しい。だから、きちんと調べたいなら、こちらは不妊治療を専門にしている施設もしくは専門外来で受けることをおすすめしたい。

河合 蘭(かわい・らん)
出産、不妊治療、新生児医療の現場を取材してきた出産専門のジャーナリスト。自身は2児を20代出産したのち末子を37歳で高齢出産。国立大学法人東京医科歯科大学、聖路加看護大学大学院、日本赤十字社助産師学校非常勤講師。著書に『卵子老化の真実』(文春新書)、『安全なお産、安心なお産-「つながり」で築く、壊れない医療』、『助産師と産む-病院でも、助産院でも、自宅でも』 (共に岩波書店)、『未妊-「産む」と決められない』(NHK出版生活人新書)など。 http://www.kawairan.com