※本稿は、シバウラ『本命株が迷わず選べる! タイパ最強の「AI」高配当株投資』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。なお、本稿は特定の銘柄を推奨・非推奨したものではありません。
「増配ランキング1位=高配当」ではない
連続増配の実績で有名な銘柄として、花王があります。筆者がまとめた連続増配ランキングでは、1位の銘柄で、36年も連続増配を続けています。この数字だけを見ると、毎年増配されるので、花王を買っておけば安心のように見えます。
しかし、高配当株投資といえば、花王ということにはなっていません。そもそも配当利回りが高いわけではないということが1つ目の理由です。2026年3月19日現在の配当利回りは2.6%となっています。全体の平均よりは少し高い配当利回りですが、そこまで高いわけではありません。配当金を目当てで花王を買う人がそこまで多くない理由です。
もう1点は、増配率が低いことです。
2020年の配当金は140円、2021年は144円で、増配率は2.86%。さらに2023年の配当金は150円、2024年の配当金は152円と、増配率は1.33%にとどまっています。
仮に、2020年に配当利回り2.5%で購入し、2024年まで保有していた場合でも、取得配当利回りは2.7%程度にしか増えていません。この程度の増配率だと、いくら毎年増配をすると言っても配当金の増えるスピードが遅く、将来高配当に育つためには、かなりの年月を要することになります。
つまり、過去の配当金の実績を確認するためには、増配や減配の回数だけでなく、増配率を確認しなければ将来高配当に育つ銘柄の選定ができないということになります。
「高い増配率」は一時的な影響かもしれない
そうであれば増配率こそが最も重要で、増配回数が少なくても増配率が高い銘柄を選ぶべきではないか、という疑問が浮かぶかもしれません。確かに結果的に見れば、増配率の高い銘柄の方が配当金を大きく伸ばしていると言えます。しかし、それが今後も継続されるかどうかは、また別の問題なのです。
たとえば、海運株などはコロナ禍で業績がよくなり、急激に配当金を増やして増配率の数字としてはよくなった銘柄です。増配率だけを見ていると、このような銘柄がよく見えてしまうことになります。
増配率も非常に重要ですが、その前に、まずは安定した企業であること、配当金の傾向が増配傾向であること、これらを踏まえたうえで増配率をあわせて見ることで、本当に配当金の還元がよい銘柄が見えてくるわけです。
増配率の調べ方ですが、たとえば「みんかぶ」というウェブサイトの有料会員であれば確認ができます。ただし、確認できるのは5年増配率までです。10年増配率を確認するためには、まとまったデータが用意されていないため、「銘柄スカウター」や「IR BANK」の配当履歴をもとに自分で算出する必要があります。ただし、増配率の計算も、最近は生成AIを使えば簡単にできます。
過去5~10年分を見る、目安は年平均10%
増配率の年数に関しては、過去5年と10年を見ておくとよいでしょう。
過去10年だけでは、最近になって増配が鈍化しているケースを見落とす可能性があります。一方で過去5年だけでは、短期的な業績の好調によって、増配率が高くなっている銘柄が含まれる可能性があります。両方を確認することで、長期的に安定して増配をしているかどうかを判断できます。
また、増配率はトータルの倍率と年平均の両方を算出しておきましょう。トータルの倍率は、5年や10年で配当金が何倍になったかが直感的にわかり、年平均は毎年どれくらいのペースで増配しているかを把握しやすくなります。目安として年平均10%以上の増配率を確認するとよいでしょう。
なお、この年平均増配率は、2026年5月の銘柄スカウターのアップデートにより、確認できるようになりました。
「累進配当」を宣言=「配当を減らさない銘柄」
ここまで過去の配当実績の確認をしてきましたが、未来の配当実績についても確認する方法があります。株式投資の世界で未来のことがわかるのであれば、これほど心強いことはありません。当然、株価が未来にどうなるのかは誰にもわかりません。ところが、配当金については企業から方針が出ており、それはある程度約束されたものになっているのです。
企業のウェブサイトには、「株主還元」や「配当方針」といったページがあり、そこには利益からどの程度を配当に回すのか、などの基本方針が記載されています。
その中で特に注目したいのが、「累進配当」を基本方針として宣言している企業です。
累進配当とは、原則として配当を減らさないという考え方です。そもそも配当を減らさないことをほぼ約束している素晴らしい銘柄が存在するのです。近年は株主還元に力を入れる銘柄が増えていることもあり、累進配当を宣言する銘柄は着実に増えてきています。
例として、三井住友フィナンシャルグループにおける株主還元の記載として、「配当は、累進的配当方針および配当性向40%を維持し、ボトムライン収益の成長を通じて増配を実現してまいります。」と書いてあり、累進配当を宣言しています(2026年3月時点)。さらに増配という記載が含まれていることから、増配に対する意識が感じられます。
「中期経営計画」に書かれている
また、企業の株主還元のページのほかに、中期経営計画の資料にも記載があることがあります。中期経営計画の期間において、株主還元の方針が書いてあることもあります。
例えば、総合商社は中期経営計画の資料に累進配当の方針を記載している企業が多い業種です。三菱商事は、「経営戦略2027」という中期経営計画の中で、累進配当の記載があります。同じように、中期経営計画の期間に累進配当を宣言している総合商社としては、三井物産、丸紅、住友商事、豊田通商、双日などがあります。
企業の株主還元の方針を見ていると、面白いことに、同じ業種内で似た傾向が見られます。これは、同業他社に対して見劣りしないようにしたいという企業側の意識の表れとも考えられます。
なぜ中期経営計画に累進配当の記載があるのでしょうか? それは、企業のウェブサイトに累進配当を書くと、一度記載したものをやめることが難しくなるためです。
これは業績が低迷したときにも累進配当を続けることになってしまうため、宣言するのはなかなか勇気が必要です。その点、中期経営計画であれば、一定期間に区切って方針を示すことができるため、業績の見通しとのバランスを取りながら累進配当を打ち出しやすくなります。もっとも、これは「その期間だけ実施する」という意味ではなく、中期的な状況を踏まえながら継続していくというスタンスを示していると考えられます。
「過去の配当実績+累進配当の宣言」で理解が深まる
「配当実績」が過去の傾向なら、「配当方針」は未来の約束です。累進配当を宣言している企業は還元意識が非常に強く、安心して長期保有できます。
株主還元の方針には、累進配当のほかに、配当性向、下限配当、そして最近増えているDOE(Dividend on equity ratio:「株主資本配当率」のこと。企業が株主資本に対してどの程度配当を支払っているかを示す指標)などがありますが、減配しない銘柄を探すという観点では、累進配当を押さえることが大切です。
この累進配当の宣言と、過去の配当実績を照らし合わせることで、企業の配当方針への理解が深まります。実際に、累進配当を掲げている企業では、連続増配や連続非減配といった実績が継続しているケースが多く見られます。こうした事実を確認することで、「なぜその実績が維持されているのか」が理解できるようになります。
