※本稿は、石川和男『誰でもできて100%仕事の成果が出る 速効読書』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
無理やり最後まで読むのは“時間のムダ”
違和感を覚えながらも無理に最後まで読んだ経験はありませんか?
「もったいない」という気持ちが、あなたを縛りつけます。しかし、本当に失っているのはお金ではなく、時間です。たとえば、1冊1700円の本を3時間かけて読んだとします。もし学びも行動の変化もなかったなら、失ったのは1700円だけではありません。あなたの貴重な3時間も失っています。
偉そうに言っていますが、私も以前は最後まで読んでいました。年間100冊読むというノルマのために最後まで読んでいたのです。しかし今は、更生して(笑)、「これは違う」と感じたら、迷わず閉じると決めています。
では、「違う」とはどんなときか。なんとなく読み進めたくないという感覚も正解ですが、それでも迷う人のために見極めのサインを整理しました。以下の兆しが出たら、手放す勇気を持ちましょう。
文体との相性は「10ページ」でわかる
【途中でやめるべき6つのサイン】
(1)リズムが合わない文体
(2)専門用語や横文字ばかりで理解が難しい
(3)「あり方」だけで、「やり方」がない
(4)著者の表現に自信がなく、断定せず曖昧
(5)難しいことを難しく書いていて、分かりやすくする工夫が見られない
(6)抽象語ばかりで使えない本
(1)リズムが合わない文体
本との「リズム」が合うときは、10ページほど読み進んだときに自然とスピードが上がっています。良い本は、気がつけばページが進んでいます。ふとページ数を確認すると「もうこんなに読んでいたんだ!」と驚くこともあります。
一方、同じページを何度も読み返す、文章が頭に入らない、集中力が削られる。そんな状態が続くなら内容以前に文体との相性が合っていないかもしれません。リズムが合わない本は、読んでいて疲れます。違和感は、読み続けるほど大きくなるからです。
「横文字ばかりでイラっ」としたら避ける
(2)専門用語や横文字ばかりで理解が難しい
「アサイン」「インセンティブ」「エンゲージメント」などの横文字が続き、その意味が分からずにイラッとくる。用語を調べながら読むことほど苦痛なことはありません(石川の経験談)。
「この言葉は何だろう」と考える作業は、読者の負荷を一気に高めます。良い本は、「アサイン=仕事を割り当てること」「インセンティブ=成果への報酬」「エンゲージメント=仕事や組織への前向きな関わり」のように、誰でも分かる言葉に置き換えてくれています。もしくは「複数の作業を同時に進めるマルチタスクが……」というように、言葉の意味を補足説明してくれています。
説明なく専門用語を連発する本で、調べながらでないと読めないなら、その本は、あなた向きではないというサインです。ただし、専門書の場合、読者ターゲットは専門家に向けられています。その場合は、本が悪いのではなく対象が違うだけなのです。
「やり方」がない本はNG
(3)「あり方」だけで、「やり方」がない
気持ちが落ち込んでいるとき、心が晴れないとき、元気が欲しいときに、「あり方」を語る本を読むと前向きになります。心に残る言葉をノートに書いて繰り返し読むことで理想のあり方を意識するのは素晴らしいことです。しかし、ビジネスコンテンツを探しているときに、「やり方」が書かれていない本は要注意です。
たとえば、「タバコは身体に悪いからやめたほうがいい」「腹八分目が健康にいい」「新入社員でも会社の不正は正すべきだ」といった主張は正論ですが、誰でも知っていることです。読者が本当に知りたいのはその先です。
タバコをやめるには、「朝コップ一杯の水を飲む」「胸ポケットに飴やガムを入れておく」「吸いたくなった瞬間に、なぜ吸いたいのか理由を考えてみる」。こうした具体策があって初めて、知識は行動に変わります。
アウトプットするためにノートに書こうと思っても書くことがない。そんな違和感を覚えたら、読むのをやめる判断ポイントです。
「曖昧な表現」「難しいだけ」の本もNG
(4)著者の表現に自信がなく、断定せず曖昧
「~だと思います」「~かもしれません」「一概には言えませんが」。こうした言い回しが多い本には、注意が必要です。もちろん慎重さは大切です。しかし、ビジネス書で曖昧な表現が続くと、読者はこう思います。
「で、結局どうすればいいの?」
行動を起こしたいのに判断材料がぼやけている。それでは動けません。ビジネス書に求めるのは、正解かどうか分からない意見ではありません。
「私はこう結論づける。だから、まずこれをやりましょう!」
その一言です。経験や実績に裏打ちされた著者は断定できます。リスクも前提も承知のうえで、それでも言い切る。一方、終始ぼかした表現が続く本は、著者自身が確信を持てていない可能性があります。読んでいて、「結局どうすればいいのか分からない」と感じたら、それがやめ時です。
(5)難しいことを難しく書いていて、分かりやすくする工夫が見られない
説明が回りくどい、一文が長い、意味が読み取れない。そんな状態が続き、理解するために何度も読み返す。「分かる人だけ分かればいい」という書き方が続く場合、読むだけで疲れてしまいます。その時点でやめる対象です。良いビジネス書は、難しい内容であっても、たとえ話や言い換えを使い、読み手に理解してもらおうと心がけます。
難しいことを難しく書くのは簡単です。難しいことを簡単に書くのが難しいのです。私も著者として、いかに分かりやすい言葉で書くかに力を注いでいます。
具体例、エピソードは載っているか
(6)抽象語ばかりで使えない本
「本質的」「戦略的」「主体性」「可能性」などの言葉が多いのに、具体的な場面や行動の説明がない本にも注意が必要です。言葉は正しそうでも、頭に情景が浮かばない。
判断の目安は、「それは、いつ・誰が・何をした話なのか」と自分で補わなければならない状態が続くかどうか。良い本は、抽象語のあとに具体例やエピソードを示し行動をイメージさせます。
読み進めても「結局、何をすればいいのか分からない」と感じたら、やめ時です。抽象語ばかりの本は、重要そうに見えて、実は役に立たないことが多いのです。
「せっかく買ったから」という思いが、あなたの貴重な時間を奪います。大切なのは、何冊読んだかではなく、どれだけ行動や思考が変わったか。合わない本を手放すことで、次の一冊、次の学びに進む時間も生まれます。本を途中でやめることは、限られた時間を守るために必要な選択なのです。
「たった1か所」気づきがあれば大成功
途中で読むのをやめたほうがいい本のサインを6つ紹介してきました。
「合わない本は、無理に最後まで読まなくていい」
そうお伝えしてきましたが、実は、1つだけ覚えておいてほしいことがあります。どんな本であっても、たった1か所でも「これは実行できそうだ!」と思える気づきが見つかったなら、その読書は大成功ということです。
たとえ6つのサインがすべて当てはまっていたとしても、「この一文を読んで、気持ちが軽くなった」「なるほど、やってみよう!」と心が動いた。それだけで、その本はもう充分に役割を果たしています。
ビジネス書の価値は、行動が変わるかどうか。そこに尽きます。たった一行をきっかけに、何かを実行し、習慣になったとしたら、1700円前後で、あなたは人生を支える強力な仲間を手に入れたことになります。
全部を理解しようとしなくていい。一行でいい。使えるものを身につけることができたなら、その読書は大成功なのです。
“読まなければならない”ときはマンガ・YouTubeで
ビジネスの現場では、ときに難解な理論書、専門性の高い実務書、会社で指定された資格試験の参考書など「避けては通れない本」があります。「難しいけれど、どうしても読まなければならない」そんなときこそ、読み方の工夫が必要です。
【①まずは「マンガ」「YouTube」で下調べ】
いきなり難しい本に挑戦するのではなく、まずは「概要」を押さえることが重要です。たとえば、そのテーマに関するマンガ版の入門書や、YouTubeの解説動画などで全体像をつかみます。最近は、難しい書籍でも要点を解説してくれる動画が豊富にあります。ざっくりとでもイメージをつかむことで、読書におけるストレスが激減します。
スティーブン・R・コヴィーの『完訳 7つの習慣』(キングベアー出版)という名著も704ページの大作です。なかなか読み進められず挫折したという話も聞きますが、マンガ版がでています。そこでポイントを押さえて、何が言いたい本なのか、どこが一番の肝なのかを先に理解してから原書に戻る。読書のハードルは一気に下がります。
ただし、たとえ1000ページある本でも「1日15分読書術」では、読み進む量はいつも同じ15分の分量です。だからページ数が多くても、そもそも負担にはなりません。
図表化、無理やり暗記するのも策
【②図や線にしてみる(視覚化)】
アウトプットの方法としてもお伝えしましたが、内容が難しく感じる原因は、抽象的な話を頭の中だけで処理しようとしていることにあります。そんなときは、図やマインドマップで形にしてしまう。
「何を言いたいのか」「話の流れはどうなっているのか」「因果関係はどこにあるのか」図や簡単な絵、線を引いたり、枠で囲んだりといった工夫でも、情報は整理されます。難しい本ほど、本の世界から飛び出させて、眺めてみてください。
【③どうしても難しいなら「一旦、暗記して進める」】
それでも、「難しい! 何を言っているのか分からない!」というときは、とりあえず暗記して進む。子どものころ、九九を意味も分からず暗記していたように、理解できないままでも、頭に入れておく。後で「あ、そういうことだったのか!」と腑に落ちる瞬間がくることがあります。
特に、法律や会計のような「専門用語が前提」の分野では、先に用語を暗記しておくと、より難しい問題に直面したときに謎が解ける場合もあります。
