最近の日常の食卓では、どのような変化が起きているか。『なぜ日本人は、それを選ぶのか? データで読み解く時間とお金の使い方』(朝日新書)を出したマーケティングリサーチ会社のインテージによると「家で食事をする機会が増える中で、簡単に準備できる冷凍食品が幅広く支持されている」という――。
冷凍食品を買うアジアの女性
写真=iStock.com/SetsukoN
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ウチ飯志向で拡大し続ける冷食市場

食卓を大きく変化させるきっかけとなった出来事に、新型コロナの感染拡大があります。

内食率のトレンドを見ると、コロナ前から高水準だった朝食ではそれほど変化がうかがえなかった一方で、昼食と夕食の内食率はコロナ1年目の2020年に急伸しました。

外出自粛によって外食ではなく内食を選ぶ人が増えたためです。21年から24年にかけて内食率が緩やかに減少したものの、コロナ前の水準を上回ったままで推移。外出自粛の動きが弱まる中でも物価高で節約のため外食を控える動きがあるためと考えられます。

【図表1】食事場面別:内食率トレンド
出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

こうした内食率の上昇を追い風として、拡大を続けているのが冷凍食品市場です。

「インテージ SRI+」から、市場規模のトレンドを見てみます。

【図表2】冷凍食品:市場規模トレンド
出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

SRI+で捕捉している2017年以降のトレンドで見ると、冷凍食品の市場は24年に6471億円と17年の1.5倍にまで成長しました。

年別ではコロナ1年目の20年に前年比111%と2桁増。コロナの感染拡大に伴う外出自粛で巣ごもり需要が拡大し、備蓄しやすい冷凍食品が人気となったと考えられます。

内食機会が増え家事負担が重くなる中で、簡便に食事を準備できることも冷凍食品が支持された理由でしょう。

冷凍水産品は7年で3倍超えの成長

また、冷凍食品は「手抜きではなく手間抜き」と、食事準備を効率化することで自身や家族の時間を増やすことができるとポジティブに捉えられるようになったことも、市場の追い風となりました。

冷凍食品は調理、農産、水産に分類されますが、規模は限られるものの17年と比べて24年に3倍を超える規模にまで成長したのが水産です。

シーフードミックスなどの魚介類素材である冷凍水産は、「インテージ キッチンダイアリー」によると、皿うどん、お好み焼き、焼きそばなど主食メニューを中心に使用されていました。主食メニューの具材として簡単に使用できることだけではなく、高騰する生鮮の魚よりも価格が安定していることも人気の理由として挙げられます。

冷凍調理のトレンドを分類ごとに見ると、お弁当の規模が減少してきていました。単身世帯や共働き世帯の増加などを背景として弁当をつくることが長期的にも減っていた中で、コロナ禍の外出自粛も弁当の需要を縮小させたと考えられます。

一方、主食・軽食、惣菜・おかず、おやつ・デザートは好調です。冷凍農産でも、野菜、果実ともに好調であり、冷凍食品の内食での活用が進んでいることがわかります。

「ワンプレート冷食」は令和の大ヒット商品

どういった商品が売れているのかを見るために、さまざまな品目の商品が展開されている冷凍調理と冷凍農産について販売金額上位10商品を確認しました。

【図表3】冷凍調理品:販売金額ランキング(2024年)
出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

冷凍調理で驚異的な伸びを示したのが17年よりも11倍を超えるまでに成長した、9位のワンプレート冷食。ご飯とチキン南蛮、カレーとハンバーグのように主食とおかずが1皿で食べられる商品です。

電子レンジでまとめて温められるだけではなく、そのまま燃えるゴミとして捨てられる紙トレーを使用したものが多く、簡便に準備・片付けができます。商品価格もおよそ400円とコスパがよく、栄養バランスを重視した商品からボリューム感を訴求する商品までラインナップが豊富なことから、幅広い年代のユーザーを取り込んでいます。

次いで伸びが大きかったのがラーメンで、17年よりも3倍近く伸びていました。専門店監修の商品や、台湾風まぜそばのように味付けに特徴のある商品などが人気で、家庭でも本格的な味わいを楽しめることが支持されているようです。

納得の冷凍農産品売れ筋ランキング

冷凍農産では、果実全体で17年よりも442%と大きく伸びていたように、4位のブルーベリーが340%、9位のミックスベリーが564%と人気となっています。

【図表4】冷凍農産品:販売金額ランキング(2024年)
出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

「インテージ キッチンダイアリー」でブルーベリーの使われ方を見ると、そのまま食べるだけではなく、ヨーグルトやスムージーなどに入れてアレンジされていました。手軽で健康によいだけではなく、アレンジレシピを楽しめることも人気の理由となっているのでしょう。

野菜で特に伸びていたのが2位のブロッコリーで17年よりも353%まで成長。24年の販売金額でも1位の枝豆に1億円差と肉薄する162億円となっています。ブロッコリーは26年度から指定野菜になることが決まっており、消費量が伸びている品目です。

ただし、生鮮品は洗う・切る・下茹でするといった手間がかかり、買い物の時もかさばって運びにくいこともあります。冷凍品では手間を簡略化でき、持ち運びしやすいことから人気となっているようです。

マッチョたちが買い支える冷凍野菜のキング

冷凍ブロッコリーで特に人気なのが、プライベートブランド商品や大容量タイプのようにコスパを訴求するもののほか、オーガニックで安全・安心を訴求するものなどさまざま。

ブロッコリーにはビタミンやミネラルなどの栄養が豊富という特徴があり、新鮮な状態で急速冷凍することで栄養価を維持しやすいのも人気の理由として挙げられます。

「インテージSCI」から、冷凍ブロッコリーの購入金額24年対17年比を性年代別に比較すると、10~20代男性が7倍超と圧倒的でした。高たんぱく・低カロリーで筋トレ食としてよいとされていることから、普段家で料理することの限られる若年層男性からも人気となっていると考えられます。

【図表5】冷凍ブロッコリー:購入金額比較(2024年対2017年、性年代別)
出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

冷凍食品が象徴する3つのキーワード

本書『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』では、「簡便化」「節約」「健康」という3つのキーワードで食卓の変化を見てきました。

メニューの種類数が食卓全体で減少しているのは、簡便化の流れを表していました。種類数の減少だけではなく、主菜では下準備に手間のかかる魚から肉へのシフトがうかがえました。人気のおかずメニューである肉野菜炒めで使用する野菜が減少していることからも、簡便化が進んでいることがわかります。

一方、ヨーグルトやナッツ類、チョコレートといった健康志向にフィットする食品にけん引されて、デザート・菓子だけは食卓登場回数が増えているという変化もありました。

この3つのキーワードはさまざまな変化の背景となっていましたが、殊に、急速に成長した冷凍食品は、これらの3つの需要を取り込んでいる象徴的な存在であると言えます。

若年層もシニア層も捉えるニーズとは

冷凍食品の消費は、若年層からシニア層でも活況です。

書影
株式会社インテージ『なぜ日本人は、それを選ぶのか? データで読み解く時間とお金の使い方』(朝日新書)

単身・共働き世帯で調理の時間をなかなか取れない生活者にとってだけではなく、加齢とともに調理の負担が重くなってきている生活者にとっても、電子レンジで温めるだけで準備できる冷凍食品は生活の支えとなっています。

とりわけ好調だったワンプレート冷食は、洗い物を減らせることから、準備だけではなく片付けの手間も削減できます。

コスパや栄養バランスにも優れていることから、「簡便化」「節約」「健康」のすべての点で魅力的な商品であるがゆえに爆発的に市場を伸ばしたと言えるでしょう。

また、冷凍ブロッコリーの好調を支えていたのは若年層男性。

健康というとシニア層が重視している印象もありますが、健康から派生する体づくり・美容は若年層の関心が高い分野です。

このように、若年層からシニア層までニーズの違いを捉えながらも幅広く需要を取り込んでいくことが、市場の成長には欠かせないのではないでしょうか。