※本稿は、長友妙子『信頼を着る 第一印象で選ばれる女性の「装い戦略」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
まずは「10着」を揃える
「信頼をまとう」ワードローブを構築するためには、いったいどんなものを何着買えばいいのか、費用はどれくらいかかるのか、不安になりますよね。でも、ご安心ください。
まずは「10着」を用意しましょう。なるべく上質なものを揃えることが理想ですが、予算面でも無理のないペースで構いません。
信頼をまとう装い方は、いわば「一生もののスキル」です。ファッションは長く付き合う大切なパートナーのようなもの。一気に完成を目指す必要はありません。
今までより「1ランク上の服」を買う意識で、無理は禁物としましょう。
では、その「10着」はどんなアイテムを選べばいいかと言うと、次のとおりです。
・ジャケット……2着
・トップス(ブラウス)……4着
・ボトムス(スカート/パンツ)……2着
・ワンピース……2着
すべてに通じるキーワードは「ベーシック」です。
上級者になれば、プリント生地やアシンメトリーなど、デザイン性の高い服を取り入れて個性を表現しても構いません。でも最初は、まずは基本をマスターすることで、さらに自分らしい装いをつくり上げることを目指しましょう。
ここで、「ベーシック」についても少し触れておきます。
ベーシックを、基礎や初歩的なものと思っていたら、それは少し違います。きちんと選べば「頼れるパートナー」になる半面、選び方によっては無難で印象が薄くなる。
そんな「ベネフィット」と「リスク」を併せ持つのがベーシックだからです。
リテラシーを上げるためにも多くのショップを回り、たくさん試着して、「これだ」と思える一着を選ぶことが大切です。
なぜ「10着」だけ揃えればよいのか
では、なぜ10着でいいのか。その理由もお話ししておきましょう。
最初に揃える「トップス4着×ボトムス2着」。この組み合わせだけで、すでに8通りのコーディネートが生まれます。
さらに、そこにジャケット2着を加えることで、「ジャケットあり」のスタイルが追加されるので、8通り×2着=16通り、合計で24通りの着回しが可能になります。
ここに、ワンピース2着を単体で着る場合と、ジャケット2着と組み合わせる場合を加えると、2通り+4通り=6通り。
これらすべてを合計すると、30通りの組み合わせが実現します。
つまり、きちんと設計された「10着」があれば、理論上、約1カ月分のコーディネートが成立するというわけです。
これは机上の空論ではありません。
ファッションコンサルタントとして、実際にワードローブを整えてきたなかで、最も再現性が高い組み合わせとして導きだしたのが、この10着という数字です。
これでもう服装決めに悩まない
「朝5分」で装いが決まるワードローブ。この仕組みができると、朝、クローゼットの前で立ち尽くすことがなくなります。
「今日はどれにしよう」と悩むのではなく、天候や気分に合わせて選ぶことができれば、結果的に5分以内で装いが決まるようになるでしょう。
「迷いがない」ということは、朝からエネルギーを消耗することなく、仕事やほかのことにエネルギーを費やせるということでもあります。
その日の自分に安心感を与え、「大丈夫!」と背中を押してくれるワードローブをつくることが、何よりも大切です。
ところで、なかには「前日のうちに翌日着る服を決める」という方も、いらっしゃるでしょう。
しかし、私はあまりおすすめしていません。
なぜなら、前日のうちに決めたところで、翌朝の気分、天候次第で「着たい服」が変わることもあるからです。
何より、服は自分に自信を与え、その日の気分を上げてくれるもの。
もし、その日の気分にそぐわない服を着てしまえば、「服のエネルギー」を借りることもかないません。
だからこそ必要なのが、少数精鋭のワードローブです。
「どんな組み合わせでも決まる10着」があれば、前もって決めておかなくても、心地よい一日を迎えることができるのです。
「雰囲気美人」になれる服とは
ここまで、「ベーシックを中心に10着を揃える」というワードローブの基本についてお伝えしてきました。
しかし、「ベーシックばかりで揃えると、無難になってしまうのでは?」と思う方もいるでしょう。実際、ベーシックは「可もなく不可もない装い」になりやすいという側面も持っています。
「オーソドキシー(正統性)&オーセンティシティ(真正性)」を兼ね備えた雰囲気美人になれるかどうかは、その「着こなし」次第なのです。
ここで大切なことが、「上質」「洗練」「華やかさ」を一貫させるということ。
何げなく揃えた、ブラックのパンツスーツにコットンシャツ。一見きちんとしているスタイルのようで、まったく印象に残らないということも少なくありません。
以前、女性ファッション誌で毎月スタイリストをしていた頃に、編集長が言っていた言葉があります。
「高評価をもらえるなら、それに越したことはない。けれど、たとえ低評価でも、読者の印象に残るならまだまし。よくないのは、まったく印象に残らず、存在すらなかったことにされること」
「印象に残ること」の大切さ
当時は、どの雑誌にも「読者アンケートはがき」が付いていました。そのアンケートにはスタイリングの人気投票があり、毎号、「好きなコーディネート」「嫌いなコーディネート」が発表されていました。
編集長が言うように、嫌いなコーディネートに入るのは決して喜ばしいことではありません。それでも多くの読者に、「あれは全然好きじゃなかった」という印象を強く残したことだけは確か。好きなコーディネートにも嫌いなコーディネートにも入らなかったページよりもずっといい、というわけです。
これは、個人にも当てはまる話ではないでしょうか。
「印象に残らない人」は、知らないうちにチャンスを遠ざけているかもしれません。
そこで、「上質」「洗練」「華やかさ」が必要となるのです。
もう少し解像度を上げると、私の考える「上質」とは、カシミヤやシルクのような「素材のよさ」、「洗練」とは「無駄のないデザインやシルエットのバランス」、そして「華やかさ」とは「光沢感と艶やかさ」のことです。
たとえば、同じ「ブラックのスーツ+ホワイトのシャツ」という組み合わせでも、この3要素を取り入れるだけで、その完成度は大きく変わります。“トレンドが感じられる上質な”スーツに、“光沢感のある”ホワイトのシャツを合わせるだけで、一気に「印象に残る」装いに変わるのです。
キーワードは「上質・洗練・華やかさ」
「信頼をまとう」の基本は「ベーシックを着こなす」ことです。
第一印象で信頼を得る装いは、「ベーシックなのに無難ではない」と言っていいでしょう。
だからこそ、服を買うときは、常に「上質」「洗練」「華やかさ」を念頭に置くこと。
・シンプルなネイビーのカーディガンでも袖口、裾などにトリミングが施されている
・シンプルなグレーのニットでも、控えめなラメ糸が編み込まれ、光沢感がある
形がシンプルなアイテムでも、さりげなく、それでいてひと味違ったデザインであれば、「洗練」された印象になります。
「神は細部に宿る」と言いますが、ファッションにおいてはまさに「美は細部に宿る」。細かな部分へのこだわりこそが、全体の価値や美しさを決定づけるのです。
服を買うときは、色や形だけでなくディテールにまでこだわる。決して華美でも派手でもなく、計算された「さりげなさ」を大切に選んでください。
