【相談内容】

正直、いま結婚を焦っています。元恋人に「復縁婚」を持ちかけるのはアリでしょうか?(36歳・アヤさん 家電メーカー)

【牛窪恵さんの回答】

女性の52%が復縁経験あり

9月17日、芸能界随一の“モテ男”とも噂されたお笑いタレント、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが、元モデルで10歳年下の香那さんとの結婚を電撃発表。直後から「復縁婚」と騒がれました。

「でも別れた恋人と、もう1度付き合うなんて……」。アヤさんのように恥ずかしがり屋な女子の皆さんは、そう思うかもしれません。

確かに復縁は、誘うほうにちょっと勇気がいるのも事実。

つい先日(10月8日)も、以前交際していた“元カレ”にストーカー被害に遭っていた女子高生が、東京・三鷹の自宅で首や腹を刺されて死亡。彼女が拒んだのに、男性が一方的に「復縁」を迫っていた様子も報道されました。

こういう時代だと、「復縁を迫るなんてひょっとしてこの人、ストーカー?」と疑われるんじゃないか、気持ち悪がられるんじゃないか、そんな不安もよぎります。

ところがここ数年、20~30代男女の間では「復縁」の大ブーム。

ある調査では、25~34歳男性1000人のうち250人、実に4人に1人が「元カノとの復縁経験アリ」と回答しているほど(※11年 WEB「R25」調べ)。

男性だけではありません。書店の女性コーナーには『元カレと復縁できる方法』(浅海/草思社)などの復縁本がズラリと並び、20~30代女性もなんと52%が、「別れたカレとヨリを戻したことがある」のです(※11年「セキララ☆ゼクシィ」調べ)。

そう、ロンブーの淳さんのケースは、決してレアケースではありません。現代の20~30代は、男女とも「復縁」に決して否定的ではないのです。

なぜこうした状況が生まれたのでしょう?

実は次のデータから、婚活サバイバル時代に生きるシングル男女のホンネが透けて見えます。

今から出会いを探すのはしんどい

図を拡大
出会いのきっかけに異変あり!

それは、11年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した、「第14回出生動向基本調査」(夫婦調査)。

この調査で「夫婦の出会いのきっかけ、結婚のきっかけ」の項を見ると、1982年から2010年までの間に、1~3位の「職場や仕事で」「友人・兄妹・姉妹を通じて」「学校で」の3つの回答が、それぞれ4~9%ずつ伸びています。

逆に目立って減ったのは、「見合い結婚」と「街なかや旅先で」。

恋愛至上主義のバブル以降、お見合いが減ったのは「むべなるかな」ですが、街なかや旅先の、いわゆる「ナンパ」が3%以上減ったのも、注目すべきところ。

総括すると、第三者を通じた見合いやナンパなど「一過性の出逢い」が減る一方で、同じ職場やごく身近な人の紹介、あるいは学校のクラスメイトや先輩など、ある程度前からよく見知った人と交際し、結婚に至るケースが増えている、というわけ。

一時期の婚活ブームがあったにせよ、まったく知らない第三者と一から出逢って結婚、というケースはまれ。仕事仲間と合コンしたり、ごく身近な人に

「私、婚活中なんです」
「誰かいい人、紹介してくださいよ~」

とお願いする、などで交際・結婚に発展する男女が、やっぱり多いのです。

図を拡大
35歳までに95%の出会いが終わっている

失礼ながら、アヤさんの年齢で、初めて出逢った異性と結婚まで至るケースも、現実には少ないもの。

同じ調査で「夫婦が特定年齢までに出逢った割合」にも注目してみましょう。すると、36歳からの出逢いを“ものにした”人の割合は、結婚まで至ったカップル全体のうち、男性の8.7%、女性では4.6%しかいない。いまから出逢いを探すのは、想像以上にしんどい作業です。

では晩婚化が進むいま、なぜ現実には「遅い出逢い」が実らないのでしょう?

負け犬はイヤなんです!

図を拡大
結婚までの交際期間が約2年増えた

最大の理由は、近年、結婚に至るまでの期間がどんどん伸びていること。

先の「国立社会保障~」の調査でも、いまや出逢ってから結婚までの「平均交際期間」は、4.3年。87年に比べ、約2年も増えた。端的に言えば、男女とも結婚に“慎重”なわけです。

一方で、昨年ごろから、おもに女性の間で「妊活」の必要性が叫ばれ、「遅くとも35~37歳までに妊娠・出産しないと、不妊の可能性が高まる」といった報道がなされるようになりました。

ゆえに、20~30代女性に取材すると、

「私、不妊治療や負け犬はイヤなんです」
「早く結婚して子どもを産まないと」

と、結婚を焦る声や、

「30歳までには結婚して、32歳までに1人目を産んで、33歳で職場復帰して……」

など、結婚・出産を“キャリアプラン”と結びつけて考えていることも多い。

私自身、30歳で結婚した割には、結局仕事に集中しすぎて産みそびれた「負け犬」なので、こうもストレートに言われると正直、カチンとはきます。

でも確かに、確率論から言えば正論ですよね。

そんな彼女たちにとって、一から知らない男性と出逢って愛を育んで、という作業は、ハッキリ言ってまどろっこしい。

男性だってそうでしょう。35歳を過ぎれば、仕事も中間管理職や現場責任者を任されるなどで、忙しい盛り。

その最中に、「はじめまして~」と作り笑顔で乾杯して、「どんなお仕事なんですか?」という社交辞令っぽい質問にあれこれ応じるのは、しんどいもの。

加えて、いまは女性を中心に

「インターネットや合コンで知らない男性と出会って、すぐ交際するのは怖い」

との思いが高まっています。連日のように、DVやストーカー問題が報道されるから。

そう、実は危険な「ストーカー時代」だからこそ、一過性の出逢いより、昔ある一定期間交際して、そのとき異常性を感じなかった「元カレ」「元カノ」のほうが、お互い何かと安心なのです。

復縁の3つのルール

私は、いまの17~26歳の男女を「さとり世代」と呼び、「世の中を悟りきった賢い男女」だと見ていますが、復縁婚もまさに、賢い彼らが合理的に愛を育むための手法。

安心・安全をベースに、低リスク、省エネルギーで目的を果たせる。私は、復縁婚を「リサイクル婚」とも呼んでいます。

とはいえ、復縁(婚)には最低限のルールがあります。

それは、おもに次の3つ。

1. いきなり連絡して、「あなたしかいない」「キミだけだ」などと迫らない
2. 1度は別れたのに、「お前さ~」など、馴れ馴れしい言葉を使わない
3. 「あのとき、なんで××しなかったの?」など、過去を蒸し返さない

1についてはとくに、注意が必要。

先日取材したヨシダさん(32歳・男性)も、

「ブログやフェイスブックで元カノの状況を確認したら、恋人がいる気配がなかった。だから、メールに『忘れられないんだ』と長々思いを込めて送ったら、『カレシいるから、ごめん』とあっさり振られた」

と嘆いていました。

一部の復縁本やサイトには、「キミだけだ」などストレートに愛を表現するほうが復縁につながりやすい、と書いてありますが、それは最低でもリアルの場で再会してみて、相手の様子を確かめてから。

逆に、ネットでちょっと状況確認したぐらいで「好きだ!」と自分の気持ちをぶつけるのは、いろんな意味でリスクが大きい。それこそ、ヘタをすればストーカーと間違えられ兼ねません。

熱い思いをストレートに伝えるのは有効。でも決してひとりよがりにならないよう、あくまでも“空気を読む”ことが大事です。「久しぶりに、お茶でもしません?」と誘って、過去に2人が“美しい思い出”を共有した場所に、もう1度行ってみるのもオススメです。

まずは熱い思いを胸に秘めたまま、焦らず、前のめりにならず、軽いやりとりから始めてみませんか?

牛窪 恵
1968年、東京都生まれ。大手出版社勤務ののち、フリーライターとして独立。2001年、マーケティング会社インフィニティを設立。定量的なリサーチとインタビュー取材を徹底的に行い、数々の流行キーワードを世に広める。『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)など著書を多数執筆する一方で、雑誌やテレビでも活躍。近日『大人が知らない「さとり世代」の消費とホンネ』(PHP研究所)発売予定。財務省財政制度等審議会専門委員。