■編集部より指令
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最終学歴と男性の未婚率(40代男性)

プレジデント誌調査によると、「結婚の条件」のなかで学歴はかなり低いポジションにあります。しかしながら、学歴別に未婚率を出すと、高学歴男性は結婚できて低学歴男性はできにくいという構図が見えてくる。ホンネのところでは相手の学歴を気にしているからでしょう。

なぜ人はこんなに学歴が気になるのでしょう。結婚において学歴はそんなに大事なものなのでしょうか。『30代未婚男』著者(共著)の大宮冬洋さん、『婚活難民』著者の佐藤留美さん、お2人のご意見をお待ちしています。

■大宮冬洋さんの回答

なぜ人は「学歴」を気にしてしまうのか -結婚と学歴・男の言い分
http://president.jp/articles/-/10719

■佐藤留美さんの回答

「学歴社会」の不文律

人はなぜ学歴を気にするのか――。永遠のテーマですね。

ここ日本で暮らす限り、就職にせよ、結婚するにせよ、人は学歴で判断される、という不文律から、長いこと解放されません。

今日び就職で人気の高い会社の中には、「ウチは学歴なんて不問だよ」というポーズを取りたいせいか、学生が提出するエントリーシートに学歴欄を設けない会社がたくさんあります。なのに、そんな会社に限って、東大卒と慶大卒の見本市みたくなっているのはなぜでしょうか?

男性利用者の入会金が“一般人”と“高学歴者”で3倍以上違う結婚相談所があるのは、どうしてでしょうか?

相も変わらず、大宮さんの母校・一橋大学のサークルに、近所の女子大生がこぞって加入するのは、どういうこと?

人は、人の学歴にこだわるのは下品で下劣で下等だとアタマでは分かっていながらも、そこから逃れることはできません。

どうしてでしょうか?

ありきたりかもしれませんが、それはやはり、自分の判断基準にイマイチ自信が持てないからではないでしょうか。

学生が「人気企業ランキング」や、「働きやすい企業ランキング」上位企業に行きたがるのと同じ。オジサンがパテック・フィリップの時計を欲しがったり、オバサンが食べログ上位の店に行きたがるのも同じ。

みんな、自分の判断基準ではない、拠り所。お墨付き、裏付けが欲しいのです。

「私、慶應の教育を出ました」

全然、関係ありませんが、私は大昔、「慶應義塾大学の教育を出た」と名乗る人(女性です)と仕事をしたことがありました。

愚かで幼かった私は、またそこで「へぇ、慶應の教育学部。自分よりアタマいい人なんだ」と、得意の思考停止に陥りました。

ところが後から聞いた話で、慶應大学に教育学部なんてものはなく、その人は慶應の通信教育を受けていたことを知りました。

この時の、私の落胆ぶりときたらありませんでした。通信教育の教育を教育学部と勘違いさせる言葉のトリックの巧妙さ。そして、それにまんまと騙された自分のふがいなさ。そして、何より、自分自身が「学歴」という、その人の本質と何ら関係のないことで、評価を180度変えてしまうことの浅はかさ。事実が判明してしまうと、彼女の魅力だった「フレンドリーさ」は、「ずうずうしさ」にしか見えません。私はそんな自分に、トコトン嫌気がさしました。そして、自己嫌悪させる彼女を憎いと思った。

そして、こうも思いました。かように学歴のインパクト(影響度)は高いものだ、と。

理解し合える「同族」を選びたい

話を結婚と学歴の問題に戻しましょう。それは上記で言った通り、お墨付き効果に加え、今や東大も文系は3割が女性という程の「女性の高学歴化」も、女性が結婚相手にそれなりの学歴を求めることを後押ししているのではないでしょうか?

人は自分と違う種類の人間と接する時、妙に構えて、不安になりますよね?

なぜなら、相手のリアクションが、自分の範囲内で想像できないからです。だから、どう接したらいいか分からない。そんな理由から、日本人はいつまでも外国人が怖いし、男は女が分からず、女も男が分からず、取りあえず嫌いだとかバカの一言で片づけたり、無視したりする。

結婚相手くらい、せめてすんなり理解できそうな同族を選びたい。だから、自分と同じくらいの学歴を求めてしまう、という論理構造が働くのではないでしょうか。

ただ、自分の理解の範囲を超えているというだけで、人間関係を限定してしまうのは、田舎臭く、みっともないものです。

似たような男女がくっついていたら、階層の固定化が進むだけで、世の中、ちっとも楽しくなりません。

高学歴女子はもっと、多様な男性に目を向けたらいいのに……と心から思う。その一方で、自分が若い女性に男性を紹介する時は、「あの人、あなたと同じ。慶應の経済出ててね……」と説明する自分がいる。そう、私は偽善者。イヤな話ですね。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。