※本稿は、深沢真太郎『本当に頭がよくなる シン・理解力 具体と抽象で鍛える数学的・言語化トレーニング』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。
「Z世代が上司世代に求めていること」
1990年代後半から2000年代にかけて生まれた世代を「Z世代」と呼びます。
いま、それより前に生まれた世代がこの「Z世代」とどう付き合えば良いのかがわからず、会社組織などでは深刻な問題に発展しています。
そこで関連する書籍を3冊以上読み、このテーマについて自分の理解をまとめてください。
このトレーニングで間違えてはいけないのが、読んだ本を要約するのではないということです。あくまで目的は「読んだ上で、どう理解したのかをまとめること」です。
私も実際に次の3冊を読み、自分なりの理解と得られた教訓をまとめてみました。もし読む本を探すのが面倒という方は、この3冊を推薦図書としてお勧めします。
『「今どきの若者」のリアル』(山田昌弘著・PHP研究所)
『メンターになる人、老害になる人。』(前田康二郎著・クロスメディア・パブリッシング)
Z世代は上司世代とまったく違う生き物
ここからは私の理解を紹介します。
定義する
まず、言葉について次のように定義します。
上司世代:Z世代より前に生まれた世代
私はこの原稿を執筆している時点で49歳ですから、まさに定義した上司世代です。そして、「職業人の教育」を本業として活動しています。今回はその立場から、3冊の本を読んだ上で理解したことを言語化してみます。
分析する
読んだ3冊の情報を参考にしますが、ここで具体例や詳細の話題は割愛します。
「これしかない」というものを選ぶと、次のようにシンプルな整理になります。
Z世代:「正解がない時代」をこれから生きていかなければならない
この2つの比較から「両者はまったく違う」存在であることがわかります。
Z世代に教えられることは何もない
その事実を認めたとき、私には上司世代に必要なことがはっきりとわかりました。上司世代がZ世代に教えられることはない。教えるという考え自体、おこがましい。上司世代の仕事は、Z世代を応援すること、一緒に戦うこと、邪魔をしないこと。これだけです。
私はまさに上司世代の人間ですが、あえてZ世代の立場になって考えてみました。
「正解のない世界で生きていく時間の方が長い人間が、正解のある世界で生きてきた時間の方が長い人間から、何かを教えてもらいたいと思うだろうか」と。
私の答えは「NO」です。何一つ、教えてもらいたいことはありません。
上司世代に求められる余裕
私は、3冊の本を読みながら「応援」や「支援」など、「援」という漢字が随所に出てくることに気づきました。
このことから、「援」という漢字が、この問題を理解する重要な一文字ではないかと考えたのです。
「援」には助ける、救うという意味がありますから、「援」ができる人は基本的に余裕のある人だと考えられます。
精神的に余裕のない人は、他人の痛みに寄り添えず、応援どころかむしろ攻撃してしまうことすらあります。経済的に余裕がなければ、被災地に支援物資を送ることはできないでしょう。経済的にも精神的にも満たされている人でなければそもそも応援などできない。つまり教育、指導、育成といったことはできないと私は考えています。
Z世代は現役の人にしか興味がない
また、今回の読書を通じて、Z世代は「現役の人」しか興味がない、という視点も興味深く感じました。ここで言う「現役」というのはプレイヤーとしてではなく、「終わった人ではない」という意味です。いわゆる「レジェンド」と呼ばれる方々を含め、管理職やマネジメントとしてまだ現役で勝負している人のことを指します。
人生をまだ諦めていないこと、若手の手本となるような挑戦を自ら続けていること。
失敗も包み隠さず見せること。
そういった姿勢のある人に、Z世代は興味を持つ傾向があるそうです。
これからの時代、難しい戦いを強いられるZ世代にとって、確かにこういう人は「一緒に戦ってくれる人」なのかもしれません。
ここで私は、サッカーワールドカップ日本代表元監督・岡田武史さんがおっしゃっていた言葉を思い出しました。
「育てるなんておこがましい。指導者の仕事は、育つことを邪魔しないことだよ」
教育の仕事に携わる私にとっても、とても印象深い言葉です。
現在、岡田さんはJリーグ「FC今治」の運営会社である「株式会社今治.夢スポーツ」の代表取締役会長であり、学校法人今治明徳学園の学園長でもあります。人材育成の分野でまさに戦っている人物です。
「私がこれまでに経験してきたことを教えてあげよう」とか「オレが育ててやろう」といった教育思想の強さは、Z世代にとっては邪魔でしかないのかもしれません。
尊敬される指導者の方程式
体系化する
ここまでの内容をまとめます。
私は、Z世代が求める上司世代の人物像は、次の3つの要素で説明がつくと理解しました。
②現役感
③教育思想
①と②は高ければ高いほど理想であり、③は低ければ低いほど理想で、このバランスが重要だと思いました。よって、具体的に次のモデルで説明ができます。
Z世代が求める上司世代の人物像は……
・「教えてあげよう」「育ててやろう」という思想が少ない人(内に秘められる人)
・現役としての自らの姿を、淡々と背中で見せられる人
・そして、精神的にも経済的にも余裕のある人物
理解を深めるためによりシンプルにする
先ほどの式を、さらにシンプルに表現することはできないかと考えます。
そこで「(余裕)×(現役)」に注目します。
この部分をさらに抽象的に捉えていくと、どのような言語化ができるでしょうか。いろんな意味で余裕があって、しかも現役で戦い続けている人物。カッコいいですよね。そして私は、もう一つ別の言葉が浮かびました。
「憧れの存在」
人は誰しも、憧れの存在があるもの。
人が成長するとき、そこには必ず憧れの存在がいます。
↓
(憧れの存在)÷(教育思想)
「推し」こそが最高の指導者
第二の理解を得る
そこで、このモデルで説明がつくほかの何かを探します。
憧れの存在であり、なおかつその人物は「教えてあげよう」「育ててやろう」という教育思想がない人に使われる表現。
私にはピッタリ当てはまる、いまの時代ならではのあの言葉が浮かびました。
「推し」
「推し」とは、人に勧めたいほど気に入っている人や物、応援したい人や物を指す言葉です。おもに、アイドルや俳優などに対して使われます。
たとえば、あなたに推しのスポーツ選手がいたとしたら、間違いなくその人物に憧れを持っているはずです。一方で、その選手は「推し」てくれることに感謝こそすれ、まさかあなたを教育しようなどとは思わないでしょう。
私は、このテーマを最終的にこう理解しました。
上司世代に求められることは、Z世代から応援される存在になることです。上司世代がZ世代を応援することは当然として、じつはその逆も必要なのです。
そう考えると、今回の3冊の本の中で「援」という字が頻繁に使われていたことや、一緒に戦ってくれることがとても重要であることに納得できます。
繰り返しになりますが、私はまさに上司世代であり、教育従事者でもあります。今回の言語化は、私にとってじつに奥深く、たくさんの気づきと戒めを得る機会になりました。
上司世代には、「諦めてしまっている人」がたくさんいます。
しかし、その上司世代があらためてスタートラインに立ち、挑戦と失敗を繰り返す姿を見せ、応援してもらうことこそ、Z世代を戦力にするもっとも重要なことではないかと思います(私も頑張ります)。
「教育とは、憧れである」
そういえば、こんな言葉を思い出しました。
「教育とは、憧れである」
今回の言語化を行うずっと前に聞いた言葉です。
正直そのときは、しっくりくる感覚もありつつ、腑に落ちない感覚と半々でした。一方で、「名言の香り」を感じました。しかしいまとなれば、これは私にとっては名言だとはっきり言えます。
今回は「Z世代」を演習問題のテーマとしましたが、ぜひ別のテーマでも実践してみてください。たとえば、いま興味があること、実際に悩んでいることをテーマにして、関連書籍を3冊以上読み込んで実践してみると面白いと思います。
たくさんの気づきを得る機会になれば嬉しいです。
