「災害ビックデータ」を防災に活用する
「今回の提携で当社が提供するのも『このビックデータ交通情報サービス』です」
トヨタ自動車のコネクティッド統括部の田村誠データ活用企画グループ長は言う。
「このビックデータ交通情報サービス」とは道路運送の車両動向実績を基に統計加工処理されたもので、道路の混雑状況を見える化するというものだ。車両の位置や速度、通行可能な道、事故多発地点などの情報を取得できる。
そしてトヨタはこうした情報を収集、蓄積し、それを基に交通情報や統計データとして加工して交通流改善や防災対策向けにアプリケーションを通して提供してきた。危険個所(ヒヤットエリア)や被災時でも通行できる道などもわかるという。
「自動車に搭載されている通信機から、位置情報や動態情報、ワイパーの動きなどの情報などの交通ビッグデータがすでに集められてきましたが、これをわれわれだけで持っているだけではなく、より広範囲に活用するために提携に踏み切ったのです」(トヨタ広報担当者)
一方でKDDIはトヨタに続いて応用地質にも提携を持ちかけていた。
「応用地質さんは、防災のコンサルティングで定評があったことと、子会社でケー・シー・エスという交通ビッグデータ解析を行う会社を持っていました。そこに可能性を感じたのです」(KDDI広報担当者)
応用地質は建設事業などの地質調査をするために1957年に設立された会社で、日本でいち早く理学的な技術の導入に成功、高度経済成長の中で急成長した。震災や災害の分野に乗り出したのは1964年の新潟地震からだ。調査団を派遣、地盤の調査などから被害の実態を調査。こうした調査をもとに震災や自然災害の分野でも日本屈指のエキスパートして注目されるようになったという。
現在、応用地質は地震・津波被害予測や国際防災プロジェクト、防災モニタリングシステム、地震被害調査、防災計画策定支援、交通ビックデータ解析などに大きな実績を持っている。官公庁や自治体向けの防災事業ではこれまであまり経験のないKDDIがこれに注目、提携を申し入れたという。
「弊社は防災減災事業、インフラメンテナンス事業、環境事業、資源エネルギー事業等の展開をしている会社です。その中で防災減災事業ではこれまで国や多くの研究機関、自治体に対して数多くのモニタリングシステムを構築し、納入している会社でもあります。今回の提携では弊社がこれまで培ってきた防災のノウハウとリソースを最大限発揮させていただきまして、自治体に対して新たな災害対策情報を提供していきたい」(成田賢・応用地質社長)
応用地質は水位計や雨量計、地震計、冠水センサーなどで得たデータを提供していくほか、KDDIの防災システム開発のアドバイスなども行っていき、KDDIが最終的に自治体への売り込みなどを進めていくことになる。
2018年度中に福岡県と実証実験を行い、国・自治体向け災害対策情報支援システムを2019年度には発売する予定だという。