実際にはインターネットに接続された車に装着されている端末や携帯端末の情報を集め、人の動きなどをパソコンの画面上に表示、迅速で正確な避難指示を行えるようなインフラを作る。自治体は地域の詳細な状況把握が可能となり、被災者は携帯端末や車載端末などを通して被災状況や避難場所を知ることができるようにしていくという。
KDDI、トヨタ、応用地質の3社が提携した理由
なぜ3社の提携が生まれてきたのか。
そのきっかけをつくったのがKDDIだ。当初、携帯端末のアプリケーションを通して災害情報の収集や分析、情報提供などを行ってきたが、ビックデータを活用する防災対策システム「国・自治体向け災害対策情報支援システム」の開発の構想が持ち上がった。
そして最初に提携先に選んだ相手がトヨタだったという。
「うちはトヨタさんとは以前からお付き合いがあり、IoT関連でも付き合いがありました。そして応用地質さんは防災の面で定評がありましたので、3社で一緒に震災向けのシステムを開発しようという話になりました」
原田部長はこう3社提携の舞台裏を語る。
KDDIとトヨタの関わりはKDDIの創業にまでさかのぼる。KDDIは、2000年にトヨタが経営参画していた国際通信のKDDと京セラが中心となって設立した長距離通信網の第二電電(DDI)と、トヨタが主要株主を務める日本移動通信(IDO)が合併して誕生した会社だ。
つまり、トヨタはKDDIの創業以来の主要株主だということだ。そのためそれ以降もさまざまな形で事業提携を進めてきており、「IoTについては最近新聞雑誌などで取り上げられていますが、当社は15年前から通信モジュール関するIoTに取り組んでまいりました」(原田部長)と語る。
KDDIはIoT事業やM2M(機械間でのネットワーク)事業には非常に力を入れてきた。ここでもトヨタとは深いかかわりを持つ。2001年にはGPIで盗難防止や防犯を行うセコムのサービス「ココセコム」で提携を開始、13年には国際間の機械の間で通信を行うグローバルM2M事業に参加、15年にはスマートメーターの提供を開始している。
こうした取り組みの中で02年には車に移動体通信を搭載してさまざまなサービスを提供するトヨタのG-BOOKの事業に参加、2016年からはからは「つながる車(コネクテッドカー)」の事業などでトヨタと提携を進めていた。
そしてKDDIから防災システムに関する提携の話がトヨタにあったのは1年前のことだった。トヨタは2013年からビックデータ交通情報サービスの提供を開始。テレマティクスサービスを「G-BOOK」や「T-Connect」を通じて車両の位置や速度の情報を収集、蓄積してきた。