AIは人が気づかない株価変動が分かる

機関投資家は、証券会社の電子取引執行システムを活用したダイレクト・マーケット・アクセス(DMA)で取引所に直接、注文を出すこともできるが、一方で、証券会社独自のノウハウをプログラミングとして盛り込み、より有利な価格で約定できるアルゴリズム取引に大きな関心を寄せている。

そうした中で野村HDは10年ごろからシステムの改革を積極的に進め、12年にはビックデータの整理を開始。14年からAIのアルゴリズムを使ったシステムの開発をスタートした。16年4月からこのシステムを導入、6月からは顧客に対してサービスの提供を行っているという。

「昔は人の経験を使って仕事をしていましたが、AIを使うと人が気づいていないような価格変動などがわかるようになったのです」(松本渉トレーディング・プラットフォーム営業部プロダクト課バイスプレジデント)

しかし、5分先を予測するアルゴリズム取引のシステム開発はそう簡単なものではなかったという。

当初は「TOPIX500」で直近1年間のデータから値動きの法則を探った。ちなみに「TOPIX500」とはTOPIX採用銘柄のうち、時価総額や流動性の高い上位500の銘柄で構成される時価総額加重型の株価指数で、TOPIXニューインデックスシリーズの1つ。その後「ティック」(日中の約定値段の推移を参考にした取引)などでも、このシステムを試したという。

「取引量の多い時価総額の高い銘柄群をもとにモデルを構築しました。予想精度を上げるためにチューニングには多くの時間を割きました。予想期間が長すぎると精度が落ち、逆に短すぎると実際の運用時に使用するのが難しくなる。また、時間をかければかけるほど、予想精度を上げられる可能性が高まるのですが、だからといってずっと開発するわけにはいきません。ある時点で実用化するための決断をしなければならなかった。そのバランスが難しかったところです」(松本氏)

そこから導き出された最適な予想期間が「5分先の予測」だった。

しかし、AIを使ったからと言って100%的中できるわけではない。それでもプロのトレーダーがやる以上の成果を上げることができるという。

「大口発注でも1日待ってもらえば最適な価格で売却ができる。これは人ではなかなかできません。AIの力を借りなければならないのです」(ハジ・タイブ氏)