「変なホテル」は変化を続けることを約束

この好調さを支えているのが、澤田氏が描くH.I.S.の次の柱だ。それは本業の旅行業に加えたテーマパーク、ホテル、ロボット、エネルギー、そして植物工場である。おそらく、これらの分野にイノベーションという横串を通すことで、エンターテインメント性にもすぐれたビジネスモデルが創出できるのだと考えられる。

だが、サービスには旬がある。恐竜に女性アンドロイドが、いつまでも人々に飽きられないという保証はない。だから、運営側からすれば次の一手を用意しておく必要がある。その意味でも、長年赤字に苦しんでいたテーマパークを再生させたH.I.S.グループには抜かりがない。

ロボットにしても、その外観はアニメキャラクターなどの使用権を獲得できれば変えることもできる。その間、それぞれのホテルで蓄積された顧客情報を生かせば、リピート客への個別対応もきめ細かになる。顔認証などの新しい技術を取り入れられれば、より満足度の高いサービスも提案できるはずだ。

清水氏は「世の中の進化のスピードはますます速くなっていくでしょう。だからこそ、私どものコンセプトが生きると信じています。『変なホテル』の“変な”とは変わり続けることを約束するホテルという意味が込められています。導入したサービスが思ったような効果を上げられないとなれば迷わず見直すことに躊躇しません」と語っている。

いずれにしても、こうしたホテルが100を超える状況になれば、それある種のスタンダードになれる。いま、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ホテルの開業ラッシュが続いている。それも首都圏だけでなく、主要観光地にも外資系高級ホテルが開業する。国内でも三菱地所やJR東日本がホテル事業を拡大はしているなかでの選択肢が増えることにもつながる。

そうしたなか、H.I.S.グループのアドバンテージは、ハウステンボスを蘇生させ、短期間に「変なホテル」を成功させたスピード感である。もちろんそれは、トップである澤田氏のリーダーシップに負うところが大きい。加えてベンチャー企業的なフットワークを失わず、事業領域の広げる戦略が各分野間のシナジー効果を生み、これからも意表を突くビジネスを創出してくるかもしれない。