人手がゼロというわけにはいかない

こうした業務改革を数字で表すと、その効果は一目瞭然だ。一般的に宿泊に特化したホテルだと、売上高から人件費などを引いた運営利益率(営業利益率)は30%前後だといわれている。これが「変なホテル」の場合、倍近くは確保しているというのだから、同業他社に比べての生産性の高さが際立つ。

「変なホテル東京 銀座」のフロントには従来多かった恐竜型ではなく、女性ヒューマノイドロボットを配置。

もちろん、ホテル経営は装置産業なので水道・光熱費もばかにならない。けれどもそこは、澤田氏が「観光ビジネス都市」と呼ぶ、ハウステンボスでの再生可能エネルギーの実証実験で得たノウハウを取り入れることでコストカットに努めてもいる。収益性の高さは、先行するライバルホテルとの差別化戦略、そして新たな開発・設備投資でも優位性を発揮する。

清水氏は「私どもが狙っているのは、安売りではありません。デラックスホテルを5つ星だとしますと、3.5星クラス。3つ星がエコノミーとすると、それよりもやや宿泊代も高い。もちろん、多彩なサービス内容を提供していくことで、その価格以上の価値を感じてもらえることでしょう」と強気だ。

「変なホテル東京 銀座」では“服がよみがえる”衣類リフレッシュ機が全室完備。

例えば、首都圏に立地し、ファミリーというよりも出張時のビジネスマンやインバウンドに伴う外国人観光客のニーズが多そうな西葛西と銀座の「変なホテル」。ここでは無料で使える衣類リフレッシュ機や外部との通話・通信が自由な携帯端末「handy(ハンディ)」を全客室に常備。利便性の高いサービスは顧客満足度を高める。それ以外にも、全館のベッドのマットレスは新幹線の座席にも採用されている体圧分散性に優れる素材を東洋紡と共同開発しており、現在の客室稼働率は9割を確保しているという。

とはいえ、バスルームやトイレの最終チェックは人間が隅々まで入念に清掃・点検する。万が一、髪の毛が1本でも落ちていたら、利用者が不快に感じるからにほかならない。いずれは、バスタブの洗浄やベッドメイキングも自動化も考えているというが、クオリティという視点からは、すぐに人手がゼロというわけにはいかないようだ。

「当社では3~5年後を目途に既存の国内および海外ホテルラインナップも含めて100軒体制をめざしています。すでに、32の施設があることから、いまのペースなら達成可能。今年4月にオープンする浜松町に続いて、赤坂、浅草橋、羽田、博多、大阪心斎橋に2つ、京都が決定しています。場所柄からもわかるように、東京、大阪、京都を中心に札幌、名古屋、福岡といった政令指定都市をターゲットにしてします」(清水氏)