帰宅難民の明暗を分けたのは

大量の情報が流れるネット全盛の社会で「情弱」というレッテルを貼られると、その人はひどく傷つく。情弱とは情報弱者の略。パソコンやスマートフォン(スマホ)のようなインターネットに接続できる情報機器をうまく利用できずに情報から取り残されたり、利用できても取捨選択できずに偽情報に翻弄されてしまう人を指す蔑称だからだ。東日本大震災直後の東京都心を例に取れば、帰宅困難になったもののスマホやケータイを活用してツイッターやミクシィなどのSNS経由で避難所情報を得て寒さや空腹をしのいだ人は情報強者、ひたすら歩き続けることしかできなかった人は情報弱者になる。

ではツイッターができる人が情報強者なのだろうか。現在も続いている福島第一原発事故ではツイッター上に正しい情報に交じって、さまざまな流言やデマが流れた。評論家の荻上チキ氏がまとめた『検証 東日本大震災の流言・デマ』には、「海苔、海藻に含まれるヨードを十分にとっておくと、放射能が身体に吸収されずに排出されます」というようなまことしやかな流言の例が載っている。海苔や海藻のレベルであれば健康被害は出にくいだろうが、なかには「うがい薬を飲むといい」といった危険な情報まで流れた。

ツイッターを活用していると自負する情報強者ほど、そのような流言に惑わされやすくなるが、そこで踏ん張って情報の取捨選択ができた人は情報強者の中の強者、実際に海苔や海藻の買い溜めに走った人は情報強者の中の弱者になる。まるで勝ち抜き戦をやっているようだ。

情弱人生から脱出する3カ条

ここまで読んで自分は情報弱者だとため息をついた人は、ネットの状況に詳しい慶應義塾大学教授の中村伊知哉氏の言葉が励ましになる。

(PIXTA=写真)

「スマホやタブレット端末が急速に浸透しつつある今は情報過渡期、インターネット出現以来、15年ぶりぐらいのメディアの大変革による騒ぎなんです。でも情報の受け手からすると、情報の取得先の間口が広がりテレビ・ラジオ・新聞・雑誌だけでなくなったということにすぎない。だからすべての機器を使いこなせなくても、パソコンでもスマホでもどれか1つ使えればよく、将来的には地デジテレビでも何とかなると思います。それより情報弱者という言葉に過度に焦らないことが必要ですね」