経理、営業事務、人事をはじめとする様々な業務のIT化は、情報化時代を企業が生き抜くための必須テーマ。しかし、中小企業においては、未だ納得のいくIT化を進められていない会社が多いのも現状だ。ではIT導入を失敗しないためには、どうしたらいいのか?

「アレもコレも」は失敗のもと。欲張りなシステムはリスクに

IT導入を失敗する中小企業には、共通したパターンがある。それは「やるからにはアレもコレも」と一度に複数の業務をIT化しようとすることだ。課題解決が必要な業務に絞ってIT化を進めてしまえばよいところを「せっかくだから顧客データ活用も、人事管理も」といったように、IT化の対象をいろいろな業務に広げすぎてしまう。その結果、検討するだけで莫大な時間と労力がかかり、元々の業務課題も解決できないまま、半年、1年と時間を費やしてしまうのだ。

また、多くの業務をまとめてIT化するには、統合型業務システム(ERP)などの導入が必要になるが、この場合、初期導入コストに数千万円、年間の運用コストも数百万円かかるのが一般的。それだけのコストに対して明確な費用対効果が見えにくいこともあり、結局、計画が頓挫してしまうケースも少なくない。さらに言えば、大規模なシステムは、一度つくってしまうと変更や修正に大きな労力とコストがかかるため、システム自体が縛りとなり、時代の変化に対応しにくくなるというリスクもはらむ。

こうしたIT導入の落とし穴を回避し、確実にIT化を成功させる方法はあるのだろうか。その意味でいま注目を集めているのが、クラウドサービスの活用だ。

クラウドサービスは、事業者の提供するITシステムを、インターネット経由で必要なときに必要なだけ利用できるサービス。ソフトウェアやハードウェアを自社で所有する場合に比べ、開発や保守・運用の負担が軽減され、初期導入コスト、ランニングコストともに大きく削減できることが大きなメリットだ。月単位で必要な機能のみを選択して契約できるので「確実に効果が見込める業務領域」に絞って、低コストかつスピーディーな導入が実現する。

結果を出すIT化の手始めは交通費や経費の精算業務から

クラウドサービスの活用に適した業務領域としては「経費や交通費の精算業務」がその一つにあげられる。あらゆる企業の活動に欠かせない経費精算業務の領域は、IT化が進んでいると思われがちだが、実情は逆。中小企業においては、未だに紙やエクセルなど人の手に頼った処理をしている会社が8割近くあるといわれている。