貯金箱に開けた「4つの投入口」

ひところ、子どもに資産運用を教えるための様々な試みがよく報じられたが、2008年9月のリーマン・ショック以降、とんと聞こえなくなった。

資産運用はしばしば「ものづくり」の対極に置かれる。「マネーゲームはダメだ。日本人はものづくりだ」というしたり顔の講釈は昨今珍しくないが、世界中をマネーが大量に駆け巡る今、未来に生きる子どもたちに質素・倹約・蓄財を言い聞かせるだけでいいのか? という疑念が湧く。

まして、子孫に残す美田を持つ人などごくごく一握り、自分の老後すら覚束ない親世代は、わが子にはお金に困ってほしくない、ましてパラサイトなどもってのほか、と考えるのが普通だ。

では、そのためにはわが子に何をどう教えておけばいいのだろうか?

「子どもには、資産の殖やし方を生々しく教える必要はないと考えています」

とは、ファンドマネジャー歴が長く、現在は各メディアで活躍するオフィスKAZの川口一晃氏。

「金融のリテラシーは学ぶべきですが、あくまで仕組みやお金の流れ。資産運用や貯金は、その中の一部です」

金融知識の普及を目的とした「金融知力普及協会」の幹事も務めた氏は、子どもに知ってほしいのは、貯め方や殖やし方よりも「使い方」だという。

「貯め方、殖やし方についてのセミナーや指南書は無数にありますが、貯めたお金をどう上手に使っていくかを教えるものは皆無です。これでは、お金の片側しか見ていないことになる」

川口氏は、しばしば米大リーグのヤンキース・イチローの小学生時代の作文を引き合いに出す。「僕の夢は一流のプロ野球選手になること」という明確な夢と目標と、そのためにやるべきことをしっかり記した有名な一文だ。