2013年3月11日(月)

4年以上絶食しても、死なない生き物とは?

プレジデントFamily 2013年4月号

著者
池田 清彦 いけだ・きよひこ
生物学者

池田 清彦

生物学者。1947年生まれ。早稲田大学国際教養学部教授。生物学の観点から、社会や環境など幅広い評論活動を行う。著書に『生物多様性を考える』『アホの極み 3.11後、どうする日本!?』『ナマケモノに意義がある』などがある。昆虫採集が趣味。

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池田清彦
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動物は外部から有機物を取り込まなければ生きていけない。植物は光のエネルギーを使って水と二酸化炭素から有機物を作ることができるので、水さえあればとりあえず生きていけるが、動物は水だけではいずれ餓死はまぬがれない。

全くエサを取らない動物もまれにいるが、これらの動物たちはエサを食べるという方法ではなく、別の特殊なやり方で有機物を取り入れている。たとえば深海の底にある熱水噴出口の周辺には、チューブワームやシロウリガイといった、エサを食べなくとも生きていける動物が生息している。これらの動物たちは体内に硫黄酸化細菌と呼ばれる化学合成細菌を飼っていて、細菌が作る有機物をピンハネして生きているのだ。熱水噴出口からは硫化水素を含む高温の水が噴き出ており、硫黄酸化細菌は硫化水素を酸化してエネルギーを取り出し、このエネルギーを使って有機物を合成している。

人間の消化管にも100兆を超える細菌が生息しているが、残念ながら化学合成細菌はおらず、すべての細菌は人間が食べる物のおこぼれにあずかって生きている。だから、我々の食物は我々自身のみならず、これらの細菌の食物でもあるのだ。

人間は深海ではなく地上に住んでいるわけだから、化学合成細菌でなく光合成細菌を皮膚の表面に取り込めば、体に水をかけて日なたぼっこしているだけで生きていけるはずだ。と考えていたら、実にそういう動物がいるのだ。

人間のような多細胞生物ではなく単細胞のゾウリムシだけれどもね。体の中にクロレラを取り込んで、クロレラが光合成で作った有機物の一部をもらっているらしい。名づけてミドリゾウリムシ。共生しているクロレラもミドリゾウリムシも独立しても生きていけるようだけれど、一緒に住んでいたほうが生きやすいようだ。ミドリゾウリムシは安易に食物をもらえるし、クロレラはゾウリムシより小さな奴には食われないだろうしね。

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