家庭責任のある女性たちは「闇雲な頑張り」が不可能だった

海老原嗣生『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』(プレジデント社)
海老原嗣生『少子化 女"性"たちの言葉なき主張』(プレジデント社)

【海老原】1970年代までは、女性の定年を30歳とするような不当差別が平気で行われていましたし、整理解雇者の選定には、「独身でも30歳以上の女性は、優先的に対象となる」という内規が普通に存在しましたから。

【江夏】男女雇用機会均等法が施行されたのが1986年。それ以前は、そうした立場に我慢ならない女性は外資系に行ったものです。ただ、仰ったような差別がなくても、家庭のことを重視する女性にとっては、仕事での闇雲な頑張りは不可能に近かったでしょう。

【海老原】そもそも、女性は四大に行けなかったんです。「四大出たら就職ないよ」と当時の親・先生は女子高生を短大に行かせた。日本型って時代的に見ればいい部分もあったと思うのですが、でも、女性はその「おこぼれ」にもあずかれなかったということでしょう。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。

江夏 幾多郎(えなつ・いくたろう)
神戸大学経済経営研究所准教授

2003年、一橋大学商学部卒業。2009年に博士(商学)を一橋大学より授与。名古屋大学大学院経済学研究科講師などを経て、2019年9月より現職。専門は人的資源管理論、雇用システム論。現在の研究関心は「公正な処遇」を可能にする制度設計と現場の運用、人事管理における実務界と研究界の関心の相違、人事管理の実務の改善に資する研究者の臨床的関与のあり方など。主著に『人事評価における「曖昧」と「納得」』(NHK出版)『人事管理』(有斐閣、共著)、『コロナショックと就労』(ミネルヴァ書房、共著)。