2024年3月27日、日本HPがAIテクノロジー内蔵のAI PC「Envyシリーズ」を新たに発表した。AI PCの市場において40~50%のシェア確保を目指す同社曰く「AIソフトとAI PCの活用は、今までできなかったことへのチャレンジのきっかけとなり、ユーザーの可能性を広げてくれるはず」。AIが浸透した時代に欠かせないツールとなるAI PCの魅力に迫る。

第三の頭脳を搭載した新時代PCの実力

ChatGPTをはじめとするAIソフトが目まぐるしい勢いで世間に浸透する昨今。膨大な情報を迅速に処理する、ハイパフォーマンスなデバイスの開発がPCメーカーに求められている。そんな中、PCシェアでトップクラスの日本HPから、AIをより手軽に活用することができるAI PCが発表された。

「2023年が『AI元年』と言われるのに対して、当社では今年の24年を『AI PC元年』と位置付けています。技術的な向上はもちろんのこと、ユーザーの皆さまがAIによって、どんな新たな体験ができるのかという視点を大切にしながら開発したのが、新しい『Envyシリーズ』です」と語るのは日本HPのコンシューマーマーケティング部長である梶間渉氏だ。

日本HPマーケティング本部コンシューマーマーケティング部長の梶間渉氏。

新EnvyシリーズがAI PCと銘打たれた理由は、AI推論演算に特化したNPU(Neural Processing Unit)内蔵の次世代プロセッサを搭載したことにある。従来のPCではAIを起動すると、CPU(Central Processing Unit)とGPU(Graphics Processing Unit)に大きな負担が掛かり、発熱やバッテリーの著しい消費を引き起こすことがあった。AI PCは、CPUとGPUに加えたNPUという第三のプロセッサにAIの処理を割り当てることで、PC全体のパフォーマンスの向上とバッテリー効率の改善に貢献できるようになったのだ。新たなプロセッサが搭載されるというのは、1970年代から始まったPC発展の歩みを振り返っても20年近く起きていなかった革新だという。

「NPUを搭載したことでユーザーに一番驚きを感じてもらえるのは、やはり処理速度の向上です。圧倒的な時間短縮によって、同じAIソフトの作業でもAI PCを使えばアウトプットする質が全く変わってくる」と新Envyシリーズの魅力を語る梶間氏。音楽編集ソフト「Audacity」を使い、ジャズの音楽テキストをベースにAIによる楽曲生成のデモンストレーションを行なったところ、NPUを内蔵していない前機種では2分39秒もの時間を要した。一方、新Envyはわずか33秒で処理を完了した。同じ条件下で、約5倍もの時間短縮につながったわけだ。

AIソフトを瞬時に起動。タブレットスタイルでも使えるコンバーチブルタイプ

「日本HPが2024年を『AI PC元年』として、企業向けから個人向けまで一気にAI PCのラインナップを拡充した背景には、技術革新により大きな変化が巻き起こる時代をリードするという決意があるんです」と梶間氏は語気を強める。

HP(ヒューレット・パッカード)の成り立ちは、カリフォルニア州の小さなガレージから始まる。創業者であるビル・ヒューレットとデイブ・パッカードが1939年にHPを創業し、ウォルト・ディズニーへのオーディオ発振器の販売を皮切りに精密機械の開発事業を進め、世界初とされるデスクトップPC「HP9100A」を世に送り出すなど、世界規模の技術発展に貢献してきた。現代では誰もが手にしたことがある手のひらサイズの電卓もHPが開発した商品だ。当時は教育者らから「人の計算能力が衰える」とデモを受けたが、高度な計算が誰でも可能になれば人々の生活が豊かになると信じ、電卓を世に広めた。HPは新しい技術の流布に、挑戦的な姿勢を取り続けてきた企業なのだ。

AIによってライフスタイルに大きな変化が起きようとしている現代においても、技術の力で世の中をリードしていく姿勢を新Envyシリーズの発表で示したのである。

「これまでは、ChatGPTをはじめとするAIのオープンリソースや、新たに登場するAIソフトに目が向きがちだったように思います。もちろん、それらも大切ですが、使いこなすための利便性の高いデバイスを選ぶことも大変重要です」と梶間氏。NPUの搭載だけではなく新Envyシリーズは、AIを活用するシーンに最適化した特徴を備えている。キーボードには「Copilotキー」が組み込まれているため、様々なAIソフトを素早く起動することができ、コンバーチブルタイプの筐体はディスプレイを360度開くことでタブレットスタイルでの使用も可能だ。また、ディスプレイが14インチなら約1.39kg、16インチなら約1.87kgという軽量で持ち運びにも適している。PC本体からユーザーが離れると画面がオフになったり、視線を外すと画面が暗くなったりするセキュリティー機能が備わっているので、カフェや公園など外出先でも使う場所を選ばない。

個人向けとして発表された「HP Envy x360 14」。タッチ操作が可能な有機ELディスプレイとPoly Studioデュアルスピーカーを搭載し、迫力のある映像視聴が可能。
約16.9mmの厚さ。USB TypeAを2口、USB TypeCを2口、HDMI2.1を1口、ヘッドホン1口など、多様なポートが搭載されている。

クリエイティブに触れてこなかった人たちこそ活用すべき

「新Envyシリーズでも『HP Envy x360 14』『HP Envy x360 16』は、個人向けとして発売されるAI PCです。多くの人に手にとっていただき、仕事や家事の時間以外でも、ぜひやりたかった挑戦に役立ててほしい」と話す梶間氏。AI PCは、今までクリエイティブに触れてこなかった人たちこそ活用すべきだと続ける。「子育て中の主婦の方でしたら、ちょっとした隙間時間でAI PCに触れ、会社に勤めていたときのスキルを活用した新しい仕事を始めることもできます。現役のビジネスパーソンの方であれば、副業やSNSの投稿などにも役立てられるでしょう。グラフィックや音楽など、やりたかったけどためらってきた新たな趣味を気軽に始めることもできます。新Envyは単なるPCではなく、AIを活用したチャレンジのきっかけとなり、ユーザーの可能性を広げるデバイスなのです。自分の新たな一面を引き出してくれる相棒、PCをあえて言い換えるなら『パーソナルコンパニオン』といったところでしょうか」。

「HP Envy x360 14」のキャッチフレーズ「なりたい自分を、起動しよう。」。今までできなかったことにチャレンジすることで、まだ見ぬ自らの可能性を見つけてほしい、という願いが込められている。

AIソフトは世界的なトレンドとなり、テキスト生成AI、画像生成AI、音声認識AI、自然言語処理AIなど、今もその種類を増やし続けている。2007年、世の中にスマートフォンが登場してからしばらくの間、雨後の竹の子のように数多くのアプリケーションが開発され、人々のライフスタイルは一変した。いまのAIを取り巻く環境は、まさにそれと同じような状態にあると梶間氏は話す。「だからこそ、まずはAIを手軽に扱えるAI PCが必要なのです。新しい技術に触れるチャンスを増やすことで、自分では想像もしなかった可能性を広げてほしいと思っています。ぜひ、新しいEnvyでなりたい自分を探してみてください」。