顧客との接点としてコンタクトセンターの重要度が高まる中、相変わらず企業を悩ませているのがオペレーターの採用や生産性に関わる課題である。しかし現代の生成AIを応用すれば、こうした「永遠の課題」についても解決の道が開けるのではないか──。いち早く実証に踏み切った富士通Salesforceサポートデスクの事例を見ていこう。

約半数が課題を認識、コンタクトセンターの「生産性」

専門誌『月刊コールセンタージャパン』編集部がまとめた『コールセンター白書』によると、企業が感じているコンタクトセンター(コールセンター)の運営課題は「オペレーターの採用・育成」が最も多く55.2%、「オペレーター1人あたりの生産性の向上」についても49.4%の企業が課題だと感じていることが分かった。

一方、ここ数年で一気に高度化し普及が進んでいるのが生成AIだ。最新の生成AIによってオペレーターの業務の一部を代替することができれば、オペレーターの採用・育成や生産性の向上についても一定の効果が期待できるだろう。だが、現状では生成AIを活用しているコンタクトセンターは5%に過ぎず、大多数は「様子見」の状態にあると思われる。

では、生成AIを活用するとどのような効果があるのだろうか。いち早く実証に踏み切ったコンタクトセンターがある。

富士通グループが運用する「富士通Salesforceサポートデスク」だ。

日本を代表するIT企業の富士通は日本国内におけるSalesforceの有力なリセールパートナーでもあり、富士通Salesforceサポートデスクは国内のリセールパートナーでは最多の問い合わせ件数に対応している。その富士通Salesforceサポートデスクはこのほど、Salesforceのカスタマーサービス向けAIであるEinstein for Serviceを取り入れ、課題とされてきた「平均処理時間(AHT)」の削減と「平均後処理業務(ACW)」の効率化を図った。

Einstein for Serviceには5つの機能が備わっている。Einstein記事レコメンデーションとEinsteinボット、Einstein会話マイニング、Einstein分類アプリケーション、Einstein返信レコメンデーションだ。2023年12月、そこへ「サービス返信(Service Replies)」「会話サマリー(Conversation Summaries)」という2つの生成AI機能が加わった。今回はその2つの新機能を活用することで生産性がどの程度改善するかを検証した。

処理時間「大幅削減」を実現した2つの新機能

結果から言うと、サービス返信の活用により平均処理時間(AHT)は20分36秒から2分18秒へ89%削減され、会話サマリーの活用により平均後処理業務(ACW)は3分36秒から0分30秒へ86%削減された。

驚くべき成果につながった2つの新機能とはどういうものか。まず「サービス返信」とは、オペレーターがチャットで顧客からの問い合わせを受けた際、オペレーターの画面上に複数の「推奨回答」が作成され、この中からオペレーターが回答を選んで投稿するというものだ。推奨回答を一部編集して回答することも可能である。また、「会話サマリー」機能は、顧客とのチャットが終了した後に3~4秒で「お問い合わせ内容の要約」を作成する機能。

実証を進める中では、生産性向上を加速する「使い方の工夫」も明らかになった。例えば「サービス返信」では、AIが提示する推奨回答をどう活用するかといった「3つのポイント」が判明。また、「会話サマリー」についても、AIによる要約を利用するうえでの「2つの特徴」が浮かび上がった。

生成AIは今、「活用すべきか否か」の段階を過ぎ、「いつどの業務で活用し始めるか」を検討するフェーズに入ったとされる。その筆頭格がコンタクトセンター業務だろう。

このほど、富士通Salesforceサポートデスクによる実証レポートがeBookとしてまとめられた。上記「3つのポイント」や「2つの特徴」が網羅された事例集は読みごたえ十分。コンタクトセンター業務に課題を感じている方には、ぜひダウンロードのうえ一読することをお奨めしたい。