3日~4日単位で食事を見ていけばいい

――「ご飯とトマトが添えられたからオッケー」というような単純な話ではなく、もっと長い期間、大きな流れで判断していくわけですね。

【成田さん】そうなんですよ。「栄養価は毎日揃えなきゃ」というものでもなくて、大人なら1週間平均、子どもなら3~4日サイクルで見ていければ。

子どもは大人に比べて体に蓄えられる栄養の量が少ないのですが、成長のためにたくさんの栄養を必要とするので、大人よりそのサイクルが短くなります。

だから子どもは毎日しっかり食べるのが大事なんですけど、まあ「栄養が蓄えにくい」といってもそんなにすぐなくなってしまうものでもないので、3~4日ぐらいの周期で平均的に栄養が取れればいいかな、というのがおおまかな目安ですね。

――トマトのように、来たるべき「チキデー」に備えて冷蔵庫に常備しておきたい添え物としては、何がオススメですか?

【成田さん】やっぱり冷凍食品・冷凍野菜が多くなるんじゃないですかね。ジャガイモ、ニンジンなどの日持ちする野菜は常備しておけばいいのですが、そういう野菜ほど調理するのにひと手間かかることが多いです。なので、冷凍野菜は強い味方になるかと。すぐ使えるので。

スーパーマーケットの冷凍食品売り場
写真=iStock.com/danielvfung
※写真はイメージです

ブロッコリーやほうれん草などの冷凍は、好きな分量だけ使えて便利です。そういうのをスープに入れて、とか。味噌汁も、粉のだしを入れて、冷凍野菜を入れてほぐれたら味噌を入れて……とやれば、3、4分で手作りの1品を用意できます。

そして野菜を増やしたかったら、味噌汁に入れる冷凍野菜の量を単純に増やすと。そんな感じですね。

あとゴマとかいいですよ。ご飯をチンしてゴマかけてってするだけで食物繊維が取れて。子どもは意外とゴマ好きですし。

ファミチキの“出し方”が重要

【成田さん】もうひとつ大事なのは、子どもへのメッセージです。食事の用意が大変でも、形だけでも「栄養のバランスを考えている」という素振りを子どもに見せてあげるっていうのが大事なところだと思います。

「今日はファミチキだけ」といって、本当にファミチキだけポーンと渡すと、子どもは「こういうのでいいんだ」と思っちゃうので……。だけどそういう時でも、たとえばファミチキにインスタント味噌汁を添えて出す、冷蔵庫にネギがあったからそれを刻んで味噌汁に散らす、海苔があったから千切って散らす……などなど、たいした手間ではないんだけど「ファミチキ“だけ”で終わらせない」という気持ち、意思表示を、子どもに対してしてあげてほしいと思います。そうした親の姿勢が、将来の子どもの食事へのスタンスにも影響を与えていきます。

――たしかに、子どもの食事観は主に親を見て培われていきますね。

【成田さん】はい。なので、ものすごく忙しい日でも、“ひと手間”の誠意を見せたいところです。で、栄養は他の日で調整する、というのがいいと思います。

「まったくがんばらない」というのは子どもにとってもよくないので、がんばれる時にがんばる、がんばれない時は“誠意を見せる”ということです。

――“誠意”がキーワードですね。ファミチキなどで手抜きをするのは必ずしも悪いことではないと知り安心しましたが、一手間を加えてギリギリのところで格好をつけて、その姿を子どもに“誠意”として示していきたいと、新たに思えました。

成田さんには引き続き、食事を担当する親として、普段は聞きにくい心の甘えからくる疑問をぶつけてみる予定である。

成田 崇信(なりた・たかのぶ)
管理栄養士

1975年東京生まれ。社会福祉法人で管理栄養士の仕事をするかたわら、主にブログ「とらねこ日誌」やSNSなどインターネット上で食と健康関連の情報を発信している。栄養学の妥当な知識に基づく食育書『新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK』(内外出版社)を執筆。共著に『各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと』(メタモル出版)、監修として『子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ』(オレンジページ)などに携わっている。

武藤 弘樹(むとう・こうき)
ライター、ミュージシャン

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。