上川外相が「ポスト岸田」と期待される理由

また、アメリカは1980年4月にイランと国交断絶して以来、敵対しています。しかし日本は、イランと良好な関係を保っています。仮の話ですが、岸田文雄首相がイランに飛び、ハメネイ師に「核開発を止めるべきだ」と言うだけでも、抑止力になり得ると思います。

上川陽子外務大臣は、こうした外交をしています。外相に就任直後、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長とエジプトで面会し、パレスチナ支援を表明しました(2023年10月21日)。その後イスラエルに渡ると、エリ・コーヘン外相と会談しています(同年11月3日)。

この実績からか、いま新聞・テレビの政治部記者をはじめ、メディアの間では、上川外相の評価が急上昇、ポスト岸田に上川陽子の名前が浮上してきました。気の早い記者は、日本初の女性総理大臣と予想するほどです。

いずれにせよ、日本は日米同盟が基本ではあるけれど、すべてをアメリカの言うとおりにするのではなく、独自性をどこまで発揮させるかが課題となります。

長年、歴史観で対立してきた日本と韓国

それでは、アメリカ以外に日本が“仲良くしたほうがいい国”はどこでしょう。もちろん、できるだけたくさんの国と仲良くすべきことが大前提ですが、あえて挙げるとすれば、韓国、オーストラリア、イギリスです。順にお話しします。

まず韓国です。日本と韓国は歴史的に古い結びつきがあります。しかし近現代、日本が韓国(当時は大韓帝国)を植民地とした韓国併合(1910~1945年)以来、元徴用工や従軍慰安婦、さらに竹島の領有をめぐる問題で、たびたびいさかいが起こりました。

2023年12月21日には、韓国の大法院(最高裁判所)で日本企業に元徴用工への賠償を命じる判決が確定しましたが、日本政府は日韓請求権協定(1965年締結)で解決済みとして抗議しています(戦時賠償金については本書の第二章で説明します)。