子どもの話を上手に聞くにはどうしたらいいのか。臨床心理士で公認心理師の諸富祥彦さんは「子どものことを大切に思う愛情や気持ちはあるのに、言い方がわからないために親子関係がねじれてしまうことが多い」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、諸富祥彦『プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術』(SB新書)の一部を再編集したものです。

怒りの拳
写真=iStock.com/Daniel Tadevosyan
※写真はイメージです

「言い方」でねじれる親子関係

私のカウンセラーとしての初仕事は、ある地域の児童相談所が振り出しでした。その後はもう40年近くカウンセラーを行っており、多くの親御さんの相談を受けてきました。そんな経験から、思うことがあります。

カウンセリングに来られる親御さんの多くは、お子さんのことを思っています。お子さんのことを大切に思う「愛情」「気持ち」はあるのです。

しかし、「言い方」がわからない方が多い。そのために親子関係がねじれてしまうことが多いのです。

いくつかケースを紹介しながら、考えていきたいと思います。

ケース1
「今度の担任の先生、いやだなあ」
「なんでいやなんだ? 困ったことがあるなら、なんでも言ってみなさい」
「だって、宿題が多いし、よく怒るから」
「なんだ、そんなことぐらい。それはお前のわがままだろう。もっと頑張んなきゃ!」
ケース2
「今日は学校に行きたくないなあ」
「なんで行きたくないの? お母さんにはなんでも話していいのよ」
「○○くんとケンカしちゃってさ。仲直りできるかな……」
「そんなことぐらい。自分で考えなさい!」

「なんでも話していい」と言ったのに…

「なんでも話していいのよ」

親のこの言葉を信じて、子どもが自分の気持ちを素直に言葉にして話すと、即座に「それはお前のわがままだ!」「もっと頑張んなきゃ!」「自分で考えなさい!」などと否定されてしまう。これでは、子どもはどうしたらいいかわからなくなってしまいます。親の言葉を信じてもろくなことはない、と不信感が募って、こころを閉ざしてしまいます。

「なんでも話していいのよ」(=私はあなたを受け止めるよ)
「お前のわがままだろう」(=あなたが悪い!)

矛盾したメッセージを親から同時に送られ続けると、子どものこころは混乱してしまいます。こうした「矛盾したメッセージ」の中にいつも置かれると、「ダブルバインド」と呼ばれる状態に陥り、精神の病を発症してしまうことにもつながりかねません。