新NISAで年2兆~3兆円の円売り圧力が続く

【パックン】そう。日本は元気になったね。

【エミン】円高になる過程で輸出が伸びていったよね。だからその後の日本の低迷は、プラザ合意のせいじゃない。イノベーションが起きなかった問題もあるし、地政学的な変化で日本からグローバル資本が出ていったこともある。

それに1989年の日経平均株価のPER(株価収益率)(※2)は60倍だった。いまは18倍だから当時とは訳が違う。日本の経済ブレーンは高齢者が多く、昭和のおやじのような考え方が続いている。円安にすれば「日本が復活する」とか「輸出業が復活する」とかって思っている可能性があるんじゃないかな。それもあって、国策として円安を推していると思う。

もう1つ、アメリカにとっても円安は都合がいい。それは、日本がキャリートレード(※3)の流動性を提供しているでしょ。その流動性はアメリカに流れて、アメリカの相場も支えているからね。

今回の新NISAもアメリカにとっては好都合。これだけ円安になったら、日本人の頭の中は「円建てで資産を持っていてはダメだ」「ドル建ての資産を買おう」となる。それは当たり前だけど、アメリカ株を日本人が高値で買っているから、アメリカの市場にとって都合いいわけ。新たな買い手が入ってきた意味で大歓迎だね。

新NISAによって、おそらく年間2兆~3兆円の円売り・ドル買いの新しい需要が生まれるから、円安が続く要因になる。

※2 PER(株価収益率) 株価と企業の利益を比較して株価が割安か割高かを判断するための指標。「株価÷1株当たり純利益」で計算される。一般的にPERが低いほど株価は割安と判断されるが、水準は業種によっても大きく異なる。
※3 キャリートレード 金利の低い通貨で資金調達して、金利の高い通貨で運用して利益を得る手法。

1ドル200円もありうる。そのとき後悔しないために

【パックン】いまは円安だから、むしろアメリカ株を高く感じて「日経平均でいいか」と思っている人も多いと思う。いつかは日本が元気になって、円がもう少し高くなることがあるだろうから、そのときにアメリカ株を買ってもいいんじゃないかな。1ドル=100円までは戻らなくても120円、130円はありうるでしょ。

【エミン】そうなる可能性もあるけど、反対に1ドル=200円になる可能性もある。

【パックン】200円はあり得ないと思うけどなあ。

【エミン】いや、普通にあり得るよ。何しろ政府が円安を推しているからね。もちろん一気に200円になるわけではく、少しずつ切り上げていく。考えてみれば、以前は1ドル=150円なんて幻だったけど、いまは慣れてしまって1ドル=140円でも円高と思うようになったよね。慣れは怖い。

【パックン】タイミングを計って株を売買するのはプロでも難しいと以前話しましたが、為替の先読みも全く一緒。本当に難しいですね。それができる人はすごく儲かるけれど、できるはずの人でも破産することがある。であれば、高いと思っても分散しながら外国のものをコツコツ買っていくのがいいと思う。そのときには、アメリカ株だけではなく日本株も買っておいたほうが最終的に分散になるんじゃないかな。

【エミン】パトリックさんはドル建ての収入はあるの?