日銀のマイナス金利政策の解除が近いと見られている。住宅ローン変動金利への影響はどう出るか。ファイナンシャルプランナーの松岡賢治さんは「4月にマイナス金利政策が解除されるだろう。しかしそれによって短期プライムレートが引き上げられる可能性はかなり低い。年内はもちろん、この2年は変動金利の変化はないだろう」という――。
衆院予算委員会で挙手する日銀の植田和男総裁(中央)=2024年2月22日午後、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会で挙手する日銀の植田和男総裁(中央)=2024年2月22日午後、国会内

マイナス金利解除後の追加利上げまで見据える金融市場

今年1月の日銀金融政策決定会合以降、金融市場では、3月あるいは4月の金融政策決定会合で、現行の「マイナス金利政策」が解除されるとの見方が広がっている。

そして、すでに次の焦点として、マイナス金利解除後の政策金利の水準と、年内の日銀の追加利上げの有無が取り沙汰されている。もし、年内に追加利上げがあれば、個人の住宅ローンの変動金利が引き上げられる可能性が出てくる。

今後の日銀の金融政策と、それが変動金利に与える影響について、金融市場のコンセンサス(見解)を交えながら解説をしていこう。

日銀の金融緩和の目標は物価の安定

今の日銀の金融政策の大枠は、2013年4月からスタートした「量的・質的金融緩和」。その最大の政策目標は、消費者物価の前年比上昇率を2%程度に維持することだ。その後、2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を、同年9月には「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、現在に至っている。

ここで重要なのは、今も金融政策は「量的・質的金融緩和」の枠内で運営されていること。

日本経済をデフレから脱却させるため、物価の安定を最優先課題としている点は全く変わっていない。その目標を達成するための手段が、消費者物価前年比2%という「インフレターゲット政策」なのである。

実は、消費者物価は2022年前半からは前年比2%を上回って推移している。だが、日銀は、「賃金と物価の好循環に確信が持てない」という理由で、強力な金融緩和を続けてきた。

日銀の言う「賃金と物価の好循環」とは、「賃金上昇で物価が上がり、物価上昇でさらに賃金が上がる」という相互作用を意味している。経済成長に必要な持続的かつ安定的な物価上昇には、そうした好循環の発生が不可欠であるというスタンスだ。