新NISAで個別株を狙うならキーワードは「高配当」と「低PBR」

――新NISAで日本の個別株に投資したい人は、銘柄をどう選べばいいですか。

【エミン】アプローチは2種類あります。1つは高配当株を狙う方法。たとえばJTは最近まで配当利回りが年7%を超えていたからすごく人気になり、最近の配当利回りは4%台になっています。JTに限らず、配当利回りが年3%を超えている日本の優良銘柄はたくさんあります。しかもPBRが1倍割れ(※)のところもまだ多いので、株価の上昇の期待もできる。そうした高配当株を狙うのが1つの考え方です。

もう1はグロース株(成長株)を狙う方法。日本のグロース株の指数である、東証グロース市場205指数のパフォーマンスは低く、大型株が中心の日経平均株価と比較すると年間で30%ほど乖離かいりしています。

これだけ乖離したのは、2006年のライブドアショック以来だから、感覚的に明らかに売られすぎだと思う。中小型株に多いグロース株はいま、株価が安くてお小遣い程度で買えるから、新NISA口座を利用して長期で持つのもいいと思う。

「日本の個別株に投資するなら、2種類のアプローチ方法がある」とエミンさん。
撮影=遠藤素子
「日本の個別株に投資するなら、2種類のアプローチ方法がある」とエミンさん。

僕がいつも言っているのは、「タンス預金」ではなく、「タンス株」にしたほうがいいということ。株を買ってタンスに入れて、もういじらない。いま外国人は日本の大型株を買っているけど、日本人気が高まっているのは確かだから、いずれ「もっと他にいい銘柄はないか」と考えて、中小型株も買いに来ると思う。だから、いい銘柄であれば上がるでしょう。ただ、日本は上場会社数が多すぎるからやっかいだよね。選ぶのが大変。

【パックン】確かに。

※PBR1倍割れ PBRは、株価が割安か割高かを示す指標で、一般的に1倍未満の場合は割安と判断される。仮に会社解散した場合、会社が保有する資産は株主に分配される。たとえば、株価が800円で1株あたり会社の財産(純資産)が1000円であれば、解散したときに1000円を受け取れる会社の株を800円で買えることになる。この場合、PBRは0.8倍となる。東京証券取引所はPBR1倍割れの企業に対し経営改革の要請を行っている。これに対応し企業が成長投資や株主還元を強化することなどによって株価の上昇が期待されている。

日本に上場企業が多すぎるのは社長が儲かるから

【エミン】東証に上場している企業は約3900社あるけど、この数は日本のGDP規模、株式市場の規模からして多すぎる。アメリカの上場会社は5000社ぐらいあるけど、GDPは日本の約6倍(2022年)あるから、いかに日本の上場企業が多すぎるかがわかるよね。日本はマックス1000社ぐらいで十分だと思う。ここまで増やしたのは証券会社だけど、僕も昔は証券会社にいたから悪く言えないな。

――適していない企業まで上場してしまっているということですか。

【エミン】そう。たとえば地方のスーパーマーケットには上場する必要がない小さい企業もたくさんあります。上場の主な目的は資金調達です。つまり事業を拡大するために上場してエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)をするわけだから、ビジネスが安定して、資金調達の必要がない企業は上場する必要はないよね。

【パックン】社長が儲かるからです。

【エミン】そうだね。