ケース5.給付金や助成金に連鎖

出産費用が高額だったのに面倒くさがって確定申告をしなかったAさんですが、確定申告をしないと今後育児にかかわる費用や助成金にも影響が出てくるかもしれません。

実は、児童手当の所得制限(※撤廃予定)や保育料の金額、高校無償化の基準も年末調整や確定申告によって計算された所得をもとに決まります。

医療費控除や配偶者控除、生命保険料控除などの控除を申告しておかないと、所得が多く見積もられてしまいます。

現状では児童手当は所得制限限度額未満であれば0~3歳未満は一律1万5000円、3歳~小学校修了までの第1子・第2子は1万円、第3子以降1万5000円、中学生は一律1万円が支給されますが、所得が所得制限限度額以上になった場合、一律5000円の特例給付になります。

【図表1】児童手当制度の概要

また、所得上限限度額以上になった場合は、特例給付も受けることができなくなってしまいます。

(参照:こども家庭庁 児童手当制度のご案内

保育料も所得によって金額が変わります。3歳児クラス以上は保育無償化で所得制限はないのですが、特に保育料の高い0~2歳の保育料は世帯住民税の所得割額によって決まります。4月から8月までの保育料は前年度の所得、9月から3月までの保育料は当年度の所得によって決まります。

控除を申告しなかったことで所得が多く計算され、それによって保育料の区分が1つ上がると、月額保育料が月6000円も上がってしまうということもあります。

(参照:杉並区 認可保育施設の保育料について

また、高校無償化(高等学校等就学支援金制度)では、通う学校や世帯所得によって支援金の金額が変わるのをご存じでしたか?

無償と言いながらも全員が無償となるわけではなく、各世帯の扶養人数や控除等が加味された上での課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除の額によって判定されます。妻が本来扶養に入れるのならば、しっかり申請しないと、申請を怠ったせいで無償化の対象外になってしまうことがあるかもしれません。

【図表2】高等学校等就学支援金 受給資格 所得要件

(参照:文部科学省 高等学校等就学支援金制度