幸福な人は独自の基準がある

私たちがインタビューした幸福な人々はそんなものを気にしていないようでした。「彼女は私よりもはるかに物知りだ。だから私は平凡な人間に違いない」というように、他人の業績が自分の感情に影響を与えるわけではなかったのです。その代わりに、数学を勉強したり、料理をしたり、おしゃべりしたりしているとどれほど楽しいか、などと自分を判断するために、独自の内面的な基準を用いているようでした。

ソニア・リュボミアスキー『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣』(日本実業出版社)
ソニア・リュボミアスキー『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣』(日本実業出版社)

このような予備調査の結果に興味をそそられ、リーと私は比較について臨床検査をして、研究結果を強固なものにしようと決意しました。それから数年の間に私たちが発見したのは、「最も幸福な人々は他人の成功から喜びを得ることができ、他人の失敗を目の当たりにしたときは心づかいをする」ということでした。

一方で、典型的な不幸な人々からは、まったく異なる人物像が浮かび上がりました。不幸な人々は、同僚の業績や成功を喜ばずに意気消沈し、同僚の失敗や破滅を目の当たりにすると、同情せずに安堵あんどするのです。私は学生たちとさらに多くの実験を行ないましたが、本質的には同じ結果がでました。つまり、人は幸福であればあるほど、まわりの人との比較に関心を払わなくなるということです。またしても、幸せな人たちの習慣から学ぶべき例が研究によってわかりました。じつをいえば、たえず自分と人を比べることは、「考えすぎる」という、より広く行き渡っている習慣の一部なのです。

ソニア・リュボミアスキー
心理学教授

米国カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授。社会心理学とポジティブ心理学のコースで教鞭をとっている。ロシア生まれ。ハーバード大学で学士号を取り、スタンフォード大学で博士号を取得した。2002年度のテンプルトン・ポジティブ心理学賞などさまざまな賞を受賞している。また、現在は『ポジティブ心理学ジャーナル』の編集に携わり、米国国立精神衛生研究所から数年にわたって助成金を受けて、「永遠に続く幸福の可能性」について研究を続けている。テレビやラジオの番組にも多く出演し、多数の講演も行なっている。家族とともにカリフォルニア州のサンタモニカに在住。