英語で話し、すぐに母語で言い直す訓練

高学年の授業風景。スライドを使ったり、議論したり。

高学年からは「セルフ・インタープリティング」(自己通訳)で、英語力とオランダ語力の両方に磨きをかける子も多い。まず、短い英語の文を話したら、すぐに母語に訳して話す方法。例えば“Today, I go skating.”と英語で言ったら、“Vandaag ga ik schaatsen”(ファンダーグ ハー イック スハーツェン)と、オランダ語に「逐次通訳」するのだ。

これは「英語は英語、オランダ語はオランダ語」ときちんと区別する訓練だ。いわゆる「バイリンガル」の中には母語の中に英語が混ざってしまう人もいる。

例えば「今週のSaturdayに、Movieを見に行こう」といった具合だ。そのような「母語と英語のチャンポン語」を使わないようにするために、両者をきちんと区別する「セルフ・インタープリティング」は非常に有効なのだ。

オランダ式はつまり、「文法後回し」

「オランダ式脳活性化学習法」では常に口と耳を使うことが重要とされる。日本で語学学習の際に不可欠だと思われている「辞書」「参考書」「単語帳」のようなものは、小学生の段階では一切使用しない。

さらに「文法」もまったく習わない。誰かとコミュニケーションを試みる際、頭で文章が構築できても、話せなくてはどうにもならないからだ。

イェット、アンナ姉妹と母親のアネミークさん。

しかし、疑問を持つ親もいる。2人の娘を持つアネミークさんも、その1人。アンナちゃんとイェットちゃん姉妹は9歳と11歳だが、家で特別に文法を学ばせているという。2人は2年前、カナダで現地の子のための4週間のサマーキャンプに参加。終了するころには、ひと通りの会話ができるようになったが、アネミークさんは不満を感じたことが原因だ。

「現地の子供たちと過ごすと、簡単な言い回しやスラングばかり覚えます。きちんとした英語を身につけるためには、文法という基礎工事が必要です」

小学校では一切文法を学ばないオランダだが、ハイスクール(13歳からの6年間)では「英文法」の授業がしっかりある。小学校の時期にいきなり文法を学んでも興味も湧かなければ、何をやっているのか理解もできない。とりあえず話せるようになってから、「ああ、なるほど。そういうことだったのか」と理論的な裏付けを与えるべきだというのが、オランダの考え方だ。