健康的な生活を送るために、毎日の食習慣を見直してみませんか? 免疫力を上げ、便秘を改善し、生活習慣病の予防にもなるというすごい食材「大麦」の効果を、管理栄養士の赤石定典さんに伺いました。
赤石定典さん
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部、管理栄養士。『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』などの本やテレビを通じ、食事で健康になる情報を発信している。

運動や睡眠とともに、健康な体づくりのために欠かせないのが毎日の食事である。とはいうものの、体に良いものを食べなければと思いつつ、偏食や暴食を繰り返している人も多いのではないだろうか。

水溶性食物繊維βベータ-グルカンの持つ力

「そんな人におすすめしたいのが1日1杯の大麦ごはんです。いつもの白米に適量の大麦をまぜて炊くだけなので、毎日の習慣として続けやすい。とても簡単で、誰にとってもおいしい健康法です」

そう語るのは東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に勤める、管理栄養士の赤石定典さん。明治期に開院した同病院は、当時の国民病といわれた脚気かっけを大麦ごはんを用いた栄養改善によって撲滅した歴史を持つ。赤石さんらが開発した大麦を使ったレシピは、入院患者に限らず幅広い世代の人たちから好評を得ている。

「大麦は腸内環境を整え免疫機能をアップしてくれます。おかげで風邪をひきにくくなる。さらに便秘が改善して、ダイエットにも効果的。生活習慣病の予防にもいい。大麦は21世紀の現在も、大人から子供まで家族みんなの健康を促進する、すごい食材なんです」

そんな大麦が持つ力の源泉は、豊富に含まれる水溶性食物繊維β-グルカンだ。その効果は、以下のように多岐にわたる。まず胃では、水分を吸収することでかさが増え、少量で満腹感を得られる。次に小腸では、糖を包み込んで吸収を遅らせ、血糖値の上昇を抑える。さらに大腸では、善玉菌のエサとなり腸内環境を整え、便通を良くする。また肝臓では、コレステロールの排出を促し、悪玉コレステロール値を下げる。まさしく八面六臂の大活躍ではないか。

β-グルカンは海藻やキノコ類にも多く含まれるが、それらの食材を毎日食べ続けるのは難しい。そこで1日1杯の大麦ごはんというわけだ。

「大麦ごはんなら、β-グルカンなど良質の食物繊維を無理なく取ることができるんですね。白米や食パン、うどんなどの麺類は精製されているため、食物繊維がほとんど残っていないのです。とはいえ、3食すべてを大麦ごはんに替える必要はない。野菜などの副菜をきちんと食べることを前提に、1日に必要な食物繊維の摂取量を考えればお茶碗1杯でちょうど良いのです」

特別な食材ではなく普段使いの食材として

それでは1日1杯の大麦ごはんを、いつ食べればいいのだろう。

「生活習慣病予防の観点からは、昼食に食べることを勧めています。昼食に大麦ごはんを食べることで、夕食後の血糖値上昇を抑えるセカンドミール効果が期待できるからです。もちろん、少量で腹持ちが良いので朝食にも向いています。自分の生活スタイルに合わせて食べる時間を決めればいいと思います。

大事なのは継続性です。特別な食材ではなく普段使いの食材として、ストレスなく、おいしく食べられる時間帯で続けてほしいですね」

最後に赤石さんは、大麦を食べてさえいれば健康になれるわけではないと釘を刺す。

「大麦にもたんぱく質やビタミンが含まれますが、肉や魚、野菜の代わりにはなりません。大麦ごはんを主食にするのであれば、たんぱく質の取れるおかずや野菜をバランス良く食べることも忘れないでください。

また大麦は消化されにくいため、胃腸の弱い人や便秘気味の高齢者には向きません。極端に食の細い人は、満腹感を得やすいごはんにまぜるのではなく、スープやヨーグルトに少量の大麦をまぜていただくといいでしょう」

白米と一緒に炊くだけで、食物繊維ともっちりぷちぷち感を手軽にプラス!
(撮影(赤石さん)=堀 隆弘)