1968年に現会長の谷川行雄が創業し、写植やDTPといった紙の情報を扱う事業からスタート。その後、社会のデジタル化に歩調を合わせ、第二創業としてインターネット事業に参入し、2003年以降はセキュリティ事業に力を注いできたプロット。その製品、サービスは、製造業や建設業、また医療機関、金融機関、自治体などからも高い支持を集めている。個人情報保護法の施行前から、安全・安心な情報のやりとりに貢献してきた同社は、この1月、社名を「CYLLENGE」(サイレンジ)に変更した。今年創業57年目を迎えた同社は、第三創業で何を目指すのか――。津島裕社長が語る。
CYLLENGE(サイレンジ)
1968年創業。現在、情報セキュリティ専門家集団としてファイル送受信の効率化、ファイルやメールの無害化対策、標的型攻撃メール対策などのソリューションを開発し、民間企業、公共機関などに提供。2024年1月5日に社名をプロットから変更。
津島 裕(つしま・ゆたか)
1973年生まれ。京都府出身。99年にプロットのインターネット事業の立ち上げに参画。2003年から“企業間コミュニケーションをセキュアにする”というコンセプトの製品開発をリードし、事業を大きく成長させる。06年より現職。

当社が開発、提供しているのは、「メール」や「ファイル」といったデータの安全性を確保するためのソリューションです。具体的な製品としては、大容量ファイルを安全に転送、共有するための「Smooth File」、現状のメール環境をそのままにセキュリティと使いやすさをアップする「Mail Defender」など。また、企業のセキュリティ向上には従業員の意識向上も欠かせないとの観点から、無料で始められる総合セキュリティ教育サービス「CYAS」も提供しています。

サイバー攻撃の手口は日々巧妙化し、被害は広がっている――。多くの経営者の方たちが、そのことを理解されています。しかしいざ対策となると、「売り上げや利益につながらないから」「うちは小さな会社だから」と後回しにしてしまう。現実には対策が不十分な中小企業が踏み台にされ、操業停止などサプライチェーンに甚大な被害が及んだ事例は多数あり、サイバー攻撃は決して人ごとではありません。今や組織の規模や知名度にかかわらず、あらゆる企業、団体が攻撃対象となっているのが実情なのです。

そうして深刻化する脅威から社会を守りたい。今回の社名変更には、そんな思いを改めて表明する意味もあります。企業理念である「私たちにしかできないことをしよう!」の下、独自の技術開発、製品開発に挑み、安心・安全なデジタルコミュニケーションを実現することが当社の使命。新社名の「CYLLENGE」は事業領域の「Cyber」と谷川が創業して以来の行動指針である「Challenge」から成るオリジナルの造語で、今後は海外にも日本発の高品質なサービスを展開していく計画です。

「ファイル無害化」も実現 全国の自治体が製品を採用

企業などのセキュリティ対策が思うように進まない理由。その一つに、相応の専門知識や労力が必要なことがあります。セキュリティ対策では、一般に安全性と利便性はトレードオフの関係にありますから、強固な対策を取れば、業務効率に影響が出てしまう。また、複数のベンダーの製品を組み合わせて防御体制を整えるのにもノウハウが求められ、自社に適した対策を自らの手で実現するのは簡単ではありません。

そこで当社は、ファイルの授受、メールの送受信、またネットワーク分離への対応など、できる限りワンストップでサポートし、お客さまの負荷を軽減。近年重視されている「ファイル無害化」の技術についても、国内でいち早く開発に成功し、製品に搭載しています。そうした取り組みが評価され、これまでの導入実績は公的機関を含め3000社以上。特に自治体については全国で600を超える市区町村や都道府県に採用いただいています。

インシデントをばねに今後さらなる成長を目指す

CYLLENGEが提供しているのは基本的にBtoB向けのソリューションですが、それぞれの製品の先には、例えば住民や患者、預金者といった個人のデータがある。そうした機密性の高い情報を守ることが私たちの仕事であることを忘れてはならないと思っています。単にセキュリティ製品をつくっているのではなく、社会のリスクを低減するための仕事をしている――。その意識が、当社が最も大事にしている“たゆみないチャレンジ”の原動力になっています。

しかしその一方で当社はセキュリティ企業を標榜ひょうぼうしながら、2023年6月にランサムウエア攻撃の被害に遭いました。大変悔しい思いとともに、お客さまや社会に対してご迷惑をお掛けしたことを大変申し訳なく思っています。

今回攻撃を受けて、初めてこの攻撃の真の恐ろしさを正しく理解しました。業務や提供しているサービスが停止してしまうだけでなく、復旧の難しさや精神的なダメージ、社員の疲弊など、想像をはるかに上回る状況に陥る極めて理不尽で悪質な攻撃です。私はこの経験を経て改めて、世の中からランサムウエア攻撃の被害に遭う企業を最小限にしたいという思いを強めています。実際に攻撃を受けたからこそ得た知見を生かし、より社会に貢献できる製品づくりを行うことで、このインシデントに遭ったことを糧にして今後の成長に役立てるつもりです。

そのためにも、私たちは企業理念である「私たちにしかできないことをしよう!」を引き続き実践していきたい。そこでは、創業時より息づく当社ならではのチャレンジ精神が大いに力を発揮するものと考えています。純国産ベンダーとしてのきめ細かい仕事によって今回のインシデントの知見と経験を生かし、今後も日本発の革新的な技術、製品に磨きをかけていきますので、ぜひ新生CYLLENGEにご注目ください。