何も持たない自分が唯一ほめられた武器とは

MKSパートナーズ時代、実力主義のコンサルティングファーム出身の人々の中で、何も持たない私が唯一ほめられたのが“コミュニケーション”でした。「清明さんは、コミュニケーション上手だね」「そういうコミュニケーションの取り方は人を巻き込んでいくからいい」と言われて、自分では意外なほど新鮮に感じました。

私流のコミュニケーションとは何かというと、なんでもまず「そうですね」と受け入れる、肯定から入るコミュニケーション。実は、意識してやっていたのではなく、私は本当に相手が言ったことがわからないから「勉強になります」「そうなんですね」と言っていただけなんです。でも、これで会社に貢献できるのならこのやり方でやっていこうと思いました。「違う」と否定するのではなく肯定することがダイバーシティにおいても第一歩だと思っています。

とにかく社員の力を使うためコミュニケーションをよくとることを心がけています。わからないことは立場に関係なく「わからないから教えて」と。自分1人で一生懸命頑張るのではなく“わからない”から始まるコミュニケーションは、非常に使えると思っています。

「老後も遊び続けたい」私の資産形成術

銀行員時代は、クレジットカードも活用して何とか生計を立てていたほど、20代の頃の私の資産はマイナスでした。PEファンドを離れることになった31歳で初めて株式投資をしました。マネックス・ハンブレクト転職後は、M&Aにかかわる中でインサイダー情報を持ち得るため株式投資は控え、35歳でマネックスグループに異動してから積立投信をはじめ、ここから私の資産形成がはじまります。

私は、仕事も遊びも全力でやりたいタイプなので、ただお金を貯めるだけではおもしろくありません。40歳から、弊社の「お任せ運用サービス」をスタート。55歳まで毎月2万円を積み立てます。67歳からは、遊ぶためのお金として、毎月7万円を引き出していくプランです。86歳くらいまで毎月引き出し、遊んで使い切ろうというプランですが、今のところ運用がうまくいっていまして、例えば、86歳になっても20%の確率で7645万6000円残る試算です。コツコツ毎月2万円の投資ですが、老後に7万円ずつ引き出しても、もしかすると86歳になってさらに7000万円が残っているかもしれないということです。おばあさんになっても遊びたい私としてはワクワクします。

マネックスグループ代表執行役社長CEO/マネックス証券代表取締役社長・清明祐子さん
撮影=小林久井(近藤スタジオ)

今、長かったデフレ時代が終わり、ようやくインフレ時代に向かおうとしています。(2024年1月から)新NISAがはじまり、税制優遇制度も整います。インフレ時代はキャッシュで持っているよりも、投資をしてお金に働いてもらったほうが資産の価値は高くなるでしょう。

これからは、人生はより長くなり、もらえる年金の額もどうなるかわかりません。だからこそ、しっかりとお金に働いてもらうことが大切。資産寿命が本来の寿命よりも少なくなっていると楽しく生きられないでしょう。国も“貯蓄から投資へ”と言っていますが、生活の中に少しでも資産形成の意識を組み入れることが重要です。

講演の後の参加者たちの様子
撮影=小林久井(近藤スタジオ)

講演のあとは、参加者からたくさんの質問が飛び交った。リーダーとしての悩み、意思決定の仕方、そして子育てと仕事の両立の難しさなどをどう解決していけばいいか、清明さんからヒントをもらった。参加者は皆、自分事化し、熱心にメモを取っていたのが印象的だ。

2023年の「プレジデント ウーマン リーダーズサロン」イベントは、11月22日(水)に開催したサロンメンバー座談会で終了。2024年も多くの女性リーダーたちとの濃い交流をめざしているので、乞うご期待!