経済や社会の混乱が家計にも大きな打撃を与える中、個人としてリスクをコントロールする手段を持っておきたい――。そうした思いなどから、今、資産運用と真剣に向き合う人が増えている。例えば全国の証券会社の顧客口座数(個人)は、コロナ前の2019年6月から今年6月までの間に約900万口座増加。4年間でおよそ1.4倍にも拡大し、その数は3千330万口座を超えている(※)

また、金融商品について「安全性」よりも「収益性」を重視する。そうした傾向も現在顕著だ。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査2022年」(二人以上世帯調査)によれば、「金融商品を選択する際に重視すること」で「安全性」と回答した人が29.7%だったのに対して、「収益性」とした人は35.9%。元本保証などよりも、金融商品の利回りや値上がりへの期待に目を向ける人が明確に多くなっている。

近しい人との会話が大切な理由とは

ただ、資産運用において漠然と収益を追求するのは禁物だ。投資を始めるに当たっては、まず目的、目標をはっきりさせるのが鉄則。そこから逆算することで自分に適した手段や投資対象が見えてくる。その際、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーには、「家族やパートナーと話すこと」を勧める人が実は多い。近しい人と話をして、目標とする資産額だけではなく、大切にしたい価値観や将来の暮らしの理想像なども考えることが、自分たちに合った運用方法を見つけるのに重要な意味を持つとの理由からだ。

そして投資をスタートしたら、「ベターを積み重ねることを意識すべき」とアドバイスする。誰しも未来を正確に予測することはできない。その中でベストな選択にこだわると、結局動きが取れなくなってしまうのだ。失敗もしながら、より良い道を地道に探り、長く資産運用を続ける。これが成功している人の共通点だという。

実際に証券口座などで金融商品を売買する際、ネット取引、対面取引の大きく二つの選択肢がある。ネット取引は手数料が比較的安く、自分の都合に合わせて取引できるのがメリットだ。一方、対面取引はリアルな情報を持つ担当者から情報を得たり、自分では考えていなかった投資対象を紹介してもらえたりする利点がある。両方を賢く組み合わせるのも一つの方法だ。

最後に、資産運用がうまくいかない人にはどんな共通点があるのか――。「それは、何に投資をしたらいいかを聞いてくる人」と答えるファイナンシャルプランナーが少なくない。全ての人に当てはまる“正解”がないのが投資の世界。自ら情報を収集し、自分に適した手段や投資対象を真剣に考えることが成功への第一歩となりそうだ。

※ 日本証券業協会「全国証券会社主要勘定及び顧客口座数等」より。