結婚したくてもできない若者たち

現在の日本では、婚姻関係にある夫婦から子どもが産まれることが一般的であること、また恋愛結婚が主流であることを踏まえると、婚姻や出産の前段階、異性との交際や性交渉経験の有無の段階ですでに社会経済的格差が影響しており、それがそのまま婚姻にも影響しているという点は深刻に受け止める必要があるであろう。

出生動向基本調査では(おおよそ5年に1回実施)、毎回の質問で生涯にわたる結婚の意思の有無を聞いているが、1987年から2015年までの間、「いずれ結婚するつもり」と回答している人の割合はほぼ変わらず、男女ともに90%近くが結婚の意思を示しているのである。ここから見えてくるのは、「若い世代の価値観の変化」ではなくむしろ「結婚したくても収入や雇用環境が足枷となり結婚“できない”若い人の姿」であろう。

サラリーと書かれた紙がハサミで裁断されている
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女性は年収200万~300万円の結婚率が最も低い

また、変わる結婚への価値観についてもここで触れておきたい。以前は女性が男性に求める結婚条件として「3高(高収入・高学歴・高身長)」などと言われてきたが、最近では「3低(低姿勢、低依存、低リスク)」とも言われる。特に注目するのが“低リスク”の部分であるが、若い世代の結婚に対する価値観は、男性が外で働き一馬力で家庭を支え、妻が専業主婦となり育児・家事を担うという“昭和モデル”はあまり想定していない。むしろ、経済的負担も、家事育児負担も一緒に担っていくという考え方をする人が増えている。

事実、結婚相手の女性に「経済力」を求める男性も、結婚相手の男性に「家事育児能力」を求める女性も増えている。以前には、高学歴・高収入女性は結婚できないとする向きもあったが、女性の収入と婚姻割合の関係を見るとU字型をしており、年収200万~300万で一番婚姻割合が低く、以降は年収が上がるほど女性も婚姻割合は増えるのである。

この背景にあるのは、先の見通せない時代にあって家計を一馬力で支えることはリスクと捉える風潮が広まっていることであろう。高度経済成長期のように毎年のように収入が上がり、豊かな暮らしを謳歌できた世代と異なり、今の若い世代はいわば生まれた時から日本経済が停滞しており、会社や社会の安定性を感じずに生きている世代である。人生100年時代、老後の不安も増す中で、昭和の結婚モデルから脱却し、夫婦ともに仕事も家事育児も分担していこうという考え方に変化してきているのである。