下位10%の上司を上位10%の上司と交換すると…

実際の分析の結果、明らかになったのは、「上司の質で、その下につく従業員の生産性が変わる」という事実でした。

下位10%の質の低い上司を、上位10%の質の高い上司と交換した場合、10人のチームに従業員を追加で一人雇ったのと同等の生産性の向上が見られたのです。

この結果は「質の高いアタリ上司」だとチームの生産性が上がり、逆に「質の低いハズレ上司」だとチームの生産性が下がることを示しています。

右肩上がりのグラフを指さすビジネスパーソン
写真=iStock.com/NicoElNino
※写真はイメージです

ラジアー教授らの分析では各従業員の生産状況が把握しやすいケースであり、必ずしもすべての例に当てはまるとは言えませんが、直感とも一致する非常に興味深い結果です。

この研究結果から、「質の低いハズレ上司」であれば、その人を代えたほうが生産性も上がるため、企業にとって得策だと言えるでしょう。

「仕事ができる上司」の下で働くと仕事満足度が向上

2つ目はウィスコンシン大学のベンジャミン・アルツ教授らの研究で、上司の仕事上の能力と部下の仕事満足度の関係を分析しています(*2)

アルツ教授らの研究で注目しているのは、「できる上司の下で働くと、部下にどんなメリットがあるのか」という点です。

アメリカとイギリスのデータを用いたアルツ教授らの分析によれば、「仕事ができるアタリ上司」の下で働く人たちほど、仕事に高い満足度を示していることがわかりました。

ちなみにこの影響力が大きいこともわかっています。

労働者の仕事満足度に影響を及ぼす要因には学歴、所得、勤続年数、業種、職種があるのですが、これらの中でも「仕事ができるアタリ上司」のもとで働くことが最も仕事満足度を高めていました。「職場の同僚との関係が友好的である」という点も仕事満足度を高める効果があるのですが、この影響よりも「仕事ができるアタリ上司」のもとで働くことのほうがプラスの効果が大きかったのです。

この結果は、「仕事ができるアタリ上司」の下で働くことの重要性を物語っています。同時に、「仕事ができないハズレ上司」の下で働くことがいかに苦渋に満ちたものになるのかを示唆しているでしょう。