JALとシャープがV字回復できたワケ

組織が機能しなくなってしまった時に取りうる対策はいくつ考えられるが、過去の成功事例と照らし合わせると、経営陣の総退陣が最も効果的である。

「それでは、ジュリー藤島氏から東山紀之へ社長交代したのと同じではないか」との意見があるかもしれないが、ここでいう「経営陣の総退陣」は全く違う。

2010年に破綻し上場廃止となったJALは、京セラの稲森和夫氏を招聘しょうへいした。古い経営陣には退陣してもらい、若手に京セラフィロソフィを注入することで意識改革に成功している。その結果、超短期間でⅤ字回復を果たし、わずか2年8カ月で再上場した。

また、2016年に債務超過に陥ったシャープは、台湾の鴻海ホンハイの傘下となった。送り込まれた戴正呉たい・せいご社長は、毎月1回「社長メッセージ」を全社員にメール。自らのビジョンや、社員に求める仕事に対する姿勢や考え方を直接伝えることで、わずか半年で黒字化、見事にシャープを立て直した。

東山氏ではなくプロ経営者を招聘せよ

2つのⅤ字回復事例に共通すること。それは、第三者のプロ経営者を招聘、経営陣を総入れ替え、組織の構成員一人一人の意識を改革することで、それまで変えよう、変えようと思っても変えられなかった組織風土の転換に成功し、それがⅤ字回復の要因となったことである。

黒船が来なければ明治維新は起きなかったように、外からの圧力がなければ変われないのは日本人の体質なのかもしれない。その意味からも経営としては素人の東山紀之氏への社長昇格ではなく、経営陣の総退陣及びプロ経営者の招聘こそが、ジャニーズ事務所が再生する可能性を高める策である。

新会社にとっても、ファンにとっても、旧ジャニーズの看板であり稼ぎ頭である東山氏にはタレントして活躍し続けてもらうことが、ベストな判断ではないか。

問題点④メディアとの関係性

大手民間企業では、不正やコンプライアンス違反があればしかるべき部署へ告発できる仕組みが整いつつある。過去は告発をした社員が排除される事案もあったが、近年では告発する者が不利益を受けないことが制度化され、常識となっている。

しかし芸能界では(少なくともジャニーズ事務所においては)、この常識が浸透していないことが今回明らかとなった。今回の事件を教訓に、メディアに影響力を振りかざし、その黙認の上にあぐらをかく付き合い方から、ビジネスパートナーとしての対等な関係性を再構築するべきである。

ジャニーズ事務所は1つの対策として、チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)を設置し、山田将之弁護士を招聘した。同機関が正しく機能することを期待する。