香りを楽しむことを生活に取り入れる効果

朝起きたら庭に出て、ローズマリー、タイム、レモンバーム、マートルなどハーブの香りを楽しむことが私の日課です。嗅覚は男性の場合60代、女性では70代から低下します。さらに、最近では認知症と嗅覚との関係も注目されており、においに鈍感になったら、アルツハイマー型認知症の初期症状が疑われるといわれています。

小山朝子『自分で自分の介護をする本』(河出書房新社)
小山朝子『自分で自分の介護をする本』(河出書房新社)

嗅覚が低下すると食欲が低下し低栄養になったり、食品の腐敗に気づけず食中毒になる可能性もあります。それだけでなく、ガスもれや煙の発生を感知できなくなるなど、生命に関わる危険性が高まるため、とくにひとり暮らしの場合には用心したいものです。

取材でパリに滞在した際、ハーブ薬局を訪れる機会がありました。ここではスタッフが個人の体調や悩みに応じてハーブティーなどを選んでくれます。私はアレルギーに効果があるハーブティーとミントのエッセンシャルオイルなどを購入しました。現地で体調を崩した際、ミントの香りにはずいぶんと助けられました。ミントには集中力を高めたり、記憶力を高める効果もあるといいます。ドイツでは嗅覚低下を回復させるため朝と晩の1日2回、さまざまな「嗅ぐ」というトレーニングがあり、治療にも使われているようです。

小山 朝子(こやま・あさこ)
介護ジャーナリスト、介護福祉士

小学生時代は家族を支える「ヤングケアラー」で、20代からは洋画家の祖母の在宅介護を担う。現在は介護ジャーナリストとして活動を展開。この間、高齢者・障害者・児童のケアを行う全国の宅老所などを取材。2013年より東京都福祉サービス第三者評価認証評価者として、「生活介護」、「就労継続支援A型・B型事業所」などで調査・評価活動も行ってきた。日本在宅ホスピス協会役員、日本在宅ケアアライアンス食支援事業委員、All Aboutガイドも務める。著書に『世の中への扉 介護というお仕事』(講談社、2017年度厚生労働省社会保障審議会推薦 児童福祉文化財)、『ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本』(河出書房新社)など。