【特別対談】石原美幸(UACJ社長)×木佐彩子(フリーアナウンサー)

2013年、古河スカイと住友軽金属工業が経営統合し、グローバルに事業を展開する日本発の総合アルミニウムメーカーとして誕生したUACJ。アルミ板の年間生産量は130万トンを超え、世界で第3位の規模を誇る。また、同社が提供する多様な製品は持続可能な社会の実現に重要な役割を果たしている。今後も世界的な需要拡大が見込まれるアルミニウムはどんな可能性を持ち、UACJはそれをいかに引き出すのか――。石原美幸社長とフリーアナウンサーの木佐彩子さんが語り合った。

多様な特性を備え時代の要請に応えてきた

【石原】当社は今年設立10周年、さらに前身の会社がアルミニウム圧延事業を開始してから125年目となります。例えば戦前は超々ジュラルミンという合金を開発し、航空機産業の発展に貢献しました。戦後は洗濯機や冷蔵庫、また鉄道車両などで軽くて強いアルミニウムが活躍。現在も、リチウムイオン電池やIT機器、自動車などの人々の生活や産業に欠かせない製品に使用される素材を提供しています。

石原美幸(いしはら・みゆき)
株式会社UACJ
代表取締役 社長執行役員
1981年住友軽金属工業に入社。同社執行役員生産本部副本部長を経て、2013年にUACJ執行役員。常務執行役員生産本部長などを歴任し、18年6月より現職。

【木佐】時代の要請に応える形でアルミニウムの利用領域は広がってきたんですね。私自身はお酒をいただくのでビールの缶がすぐ思い浮かびますが、人の目に触れないところでもたくさん使われていて、今やそれなくして生活が成り立たない。それだけ利用価値が高い素材ということなんでしょうか。

【石原】耐食性や加工性に優れているのもアルミニウムの特長です。加えて見逃せないのが地球環境への貢献。溶解温度が比較的低いためリサイクルしやすく、さらにその際に排出されるCO2量は、原料のボーキサイトから造るのと比べて約3%で済みます。

【木佐】わずか3%。つまりCO2の排出量が97%削減される。それが、今世界で需要が拡大している理由でもあるわけですね。メーカー間の国際競争も激しいと思いますが、10年前の経営統合にはそうした背景もあったのでしょうか。

【石原】まさに世界で戦える体制づくりは大きな目的でした。現在私たちは、日本、北米、タイを基軸にグローバル供給体制を構築しています。各地に拠点を構える中、組織の結束力強化などを目的に、自社の存在意義を明確にする理念体系の再定義にも取り組み、2020年から「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。」を企業理念としています。

【木佐】企業理念を社内に浸透させる独自の活動があると聞きました。

【石原】当社では理念を“わが事”化するために私を含めた役員と現場の社員が意見交換する「理念対話会」を実施しており、回数は私の担当分だけでも全社で110回を超えました。この会は、社員一人一人が自身の仕事が社会でどんな意味を持つのか、社内外で誰の役に立っているのかを確認する良い機会になっています。

【木佐】重要な取り組みですね。放送でも、アナウンサーを含めたスタッフが誰に何を伝えるかを意識することは欠かせません。ただそのとき、全員が仲のいい現場より、異なる考えを持つ人が真剣に議論できる現場の方が番組としては長続きする。そんな経験則があります。

【石原】互いに言いたいことを言い、納得して仕事をすることは大切ですね。それが多様性を生かすことにつながります。当社でも各自が自分の仕事が誰の何に役立っているのか考えるようになり、コミュニケーションが活性化しています。

高度な生産設備はUACJの強みの一つ。主力工場である福井製造所は、全長400m、幅4.3mに及ぶ世界最大級の大型圧延機を有し、自動車や船舶、宇宙航空分野で使われる超幅広で均一なアルミニウム厚板の製造も行っている。

バリューチェーン全体でサーキュラーエコノミーを

【木佐】企業理念に掲げる「持続可能で豊かな社会の実現」に向けては、どんなことに取り組んでいるのでしょうか。

木佐彩子(きさ・あやこ)
フリーアナウンサー
フジテレビのアナウンサーとしてスポーツ番組、報道番組などを担当。2003年にフリーアナウンサーとなり、各種メディアで活躍。小学2年生から7年間、また結婚後に米国で生活した経験を持つ。

【石原】注力しているのが、「アルミニウムのサーキュラーエコノミーの心臓」となる取り組みです。

【木佐】「心臓」というと……。

【石原】当社はリサイクル活動で回収されたアルミニウムを溶解し、新たに素材や製品として市場に送り出していますから、まさに心臓に当たります。資源循環の“血管”をより太く、そして強くするため、使用済みアルミ缶のリサイクル事業を行う山一金属さまと共に「溶解リサイクルシステム」を構築したり、東洋製罐さまと環境配慮型のアルミ缶の共同開発を検討したり、“静脈”と“動脈”それぞれで他社と連携する取り組みも進めています。

【木佐】個人がごみの分別などをしても、それがきちんとリサイクルされなければ意味がないし、今は多くの消費者が「自身も社会課題の解決に貢献したい」と考えています。その意味で、企業などによる仕組みづくりはとても重要です。また、それぞれ技術やノウハウを持つ企業が得意分野を持ち寄って社会課題と向き合っているのも、今の時代にマッチしていると感じます。

【石原】おっしゃるとおり、アルミニウムの循環経済は一企業では成し遂げられません。バリューチェーン全体でこれを推進していきたいと考えています。

【木佐】これまでにない挑戦から、新たなビジネスチャンスも生まれそうですね。最後に、次の10年に向けたUACJの抱負を聞かせてください。

【石原】「素材+α」の価値提供をより積極的に推進したいと考えています。私たちの強みは、板・自動車部品・押出・鋳鍛・箔・金属加工の六つの事業を持っていることです。各事業で長年蓄積してきた技術力、開発力がありますから、それを生かして設計段階からお客さまと協業したり、最適なものをこちらから提案したり。各事業のコラボもあります。そうしてアルミニウムの活躍の場を広げ、コーポレートスローガンである「アルミでかなえる、軽やかな世界」を実現していきたいと思います。

【木佐】普段あまり意識することのないアルミニウムですが、今日お話をして、それがこれからの時代の“地球セーバー”になり得る。そんなふうに感じました。社会の在り方が刻々と変化する中、アルミニウムの力が必要とされる場面は今後もきっと増えるはず。事業活動そのものを通じて、循環型社会を支えるUACJの今後の取り組みに期待しています。