82%の国民が「祖国防衛」に積極的

フィンランドでは、フィンランド大公国時代の1878年に徴兵制が導入され、1950年に国家徴兵法が制定された。米ソ冷戦が終結した後も、フィンランドでは徴兵制が一貫して維持されてきた。

最も大きな要因は、ロシアに対する軍事上の警戒心である。ロシアとの間に1300キロを超える陸上国境が横たわるという事実は、冷戦が終わっても何ら変わりない。隣国であるスウェーデンが、2010年に徴兵制を一旦廃止したのとは対照的だ。なお、スウェーデンは2018年に徴兵制を復活させている。

フィンランド国防省によって、2022年5月に実施された世論調査によれば、フィンランドが攻撃された際に、祖国防衛に参加するとの回答は、実に82%に上った。直接的には、目下のウクライナ危機が関係しているが、それに加えて、第二次世界大戦中の冬戦争で、ソ連に侵略された苦い歴史が背景にはある。

国民の非常に高い国防意識は、民主主義国家の強靭きょうじん性を示しており、権威主義体制との対峙たいじが激化するにつれ、その重みは増していくだろう。さらには、フィンランドを侵略しようとする者の意志を怯ませる効果も期待される。

国民の高い国防意識に支えられることで、フィンランドの徴兵制は機能している。篠田研次元駐フィンランド大使がヘルシンキ在勤中に得た感触によれば「フィンランドの人々は、人生の一定期間若い頃に兵役に服し、その後老いるまでの間も予備役として技量・知識が消えないよう何年か毎に訓練のために軍に戻ることを極々当然のこととして受け止めており、国民の徴兵制度に対する支持は揺るぎないものである」という。

非武装中立は綺麗ごとでしかない

世界の中で徴兵制を採用している国は、現在64カ国ある。中立国として知られるスイス、オーストリアでも、徴兵制が維持されている。両国とも、徴兵制に基づく国防力を背景に、中立を維持している。スイスでは、民兵制によって軍が組織され、民間防衛についても憲法で規定されている。軍事同盟に加わっていない中立国では、自分たちで自国を守る重要性がさらに大きい。非武装中立とは、まったく正反対の現実が、そこにはある。

ヨーロッパでは、徴兵制をいったん廃止したものの、再び採用するという徴兵制復活の動きもみられる。リトアニアでは2015年に、フランスとスウェーデンでは2018年に復活した。2007年に志願制となったラトビアでも、徴兵制再導入に向けて、国防省が取り組みを開始している(2024年からの再導入が決定。)。

スウェーデンでは徴兵制復活にあたり、国防相がロシアに言及し、クリミア侵略やスウェーデン近傍での演習増加を挙げた。バルト三国での徴兵制復活の背景にも、ロシアへの警戒があるだろう。徴兵制が維持されているエストニアでは2023年に、徴兵期間の延長が決定した。

フランスでは1996年に、当時のシラク大統領によっていったん廃止されたが、マクロン大統領が大統領選挙で公約し、徴兵制を復活させた。マクロン大統領は、「国家連帯の礎石を固める」と述べ、社会的紐帯という観点から徴兵制を重視する姿勢を示した。