日本企業が脱炭素をリードする

脱炭素は世界中の大きな課題ですが、日本の技術のすごさを示す記事が続いています。まず、7月6日の日本経済新聞には「レーザー核融合、世界初の実証炉 阪大発スタートアップ」との記事が掲載されました。

核融合発電は脱炭素に貢献するエネルギー源として期待されています。大阪大学のスタートアップが2030年代半ばの商用化を目指しているとのことです。

核融合の発電への応用は2050年以降になると見込まれていましたから、これは非常に早いスピードです。

同じ日に「ごみ分別せずプラ再生 荏原が新技術、回収・処理効率化」という記事もありました。荏原製作所(6361)がごみを細かく分別しなくても、プラスチックをリサイクルするできる技術を開発したといいますから、ごみ処理が大きく変わる可能性があります。ごみを高温処理して分子レベルまで分解してプラスチックの成分だけ抽出してプラスチックを再生します。

たとえば、コンビニエンスストアのお弁当の容器はプラスチックですが、中身のごはんやおかずは有機物です。これまで売れ残りの弁当はまとめて焼却するか、人の手で分別して容器をリサイクルするしかありませんでした。この技術を使うと、まとめて入れれば、プラスチックだけ回収できてしまうのです。

トヨタがEVで生産革命

もう一つトヨタ自動車(7203)の記事です。7月5日に掲載されたものですが、「トヨタ、EVで生産改革 工程や工場投資を半減」となっています。新たな生産技術「ギガキャスト」を2026年に発売する電気自動車(EV)に採用するといいます。

ギガキャストはボディの骨格のようなものです。トヨタは次世代EVで車体を前部、中央、後部の3つに分ける構造を検討しますが、そのうち、後部と前部でギガキャストを利用します。後部の試作品ではこれまで部品点数が86点ありましたが、1点で済むそうです。また、工程数も33から1に集約できます。前回の記事でも紹介しましたが、トヨタがEVでいよいよ本気を出しているようです。

世の中が大きく変わることを示した記事もありました。7月21日の日本経済新聞には「テレビ出荷が過去最低 23年1〜6月、外出消費増の陰で」との記事が掲載されたのです。JEITA(電子情報技術産業協会)が発表した2023年1〜6月の薄型テレビ出荷台数が01年以降、上半期として過去最低だったのです。

この記事を見て私は改めて「すでにテレビの時代は終わった」と感じました。テレビを持っていない若者はすでにたくさんいます。スマートフォンで動画を視聴するスタイルが定着していますから、いずれテレビはなくなるのではないでしょうか。

これは世の中の大きな流れといえます。たとえば、NHKは受信料を徴収できなくなるかもしれません。さまざまな影響が出てくるはずです。

このように新聞記事から世の中の大きな流れをつかむことが投資やビジネスを成功させる秘訣ひけつです。

渡部 清二(わたなべ・せいじ)
複眼経済塾 代表取締役・塾長

1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。20年以上の継続中で、2022年秋号の会社四季報をもって、計100冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年複眼経済塾に社名変更。2017年3月には、一般社団法人ヒューマノミクス実行委員会代表理事に就任。テレビ・ラジオなどの投資番組に出演多数。「会社四季報オンライン」でコラム「四季報読破邁進中」を連載。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一「四季報」を愛する男」と紹介された。著書に、『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SB新書)、『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(東洋経済新報社)、『「会社四季報」最強のウラ読み術』(フォレスト出版)、『10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート』(KADOKAWA)などがある。