1.純資産総額が50億円に満たない投資信託

最初に避けなければならないのは、純資産総額の規模が小さい(50億円未満)投資信託です。

純資産総額は、投資信託に組み入れられている株式や債券などの時価総額で、投資信託の規模を示す代表的な数値です。これがあまりにも小さいと、運用面においてさまざまな影響が生じてきます。

まず、十分な分散投資ができなくなる恐れがあります。

最近は、「ファミリーファンド方式」といって、複数のベビーファンドで、ひとつのマザーファンドを共有する仕組みを持つ投資信託が増えています。これなら、マザーファンドの純資産総額が比較的大きくなるので、個別ファンド(ベビーファンド)の純資産総額が小さいとしても、十分な分散投資効果が得られます。注意しなければならないのは、ファミリーファンド方式ではなく、その投資信託が直接、株式や債券に投資している投資信託の場合です。

投資信託は、純資産総額の規模の範囲でしか、株式や債券を購入できません。したがって、純資産総額の規模が小さくなるほど分散投資効果が下がり、投資信託ならではともいうべき分散投資メリットを活かせなくなると考えます。

「マル」「バツ」の記号が描かれたブロック
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
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繰上償還リスクが高まる

また、純資産総額が小さいと、償還日前なのに強制的に償還されてしまう「繰上償還リスク」があります。

投資信託を保有していると信託報酬というコストがかかります。

信託報酬は、投資信託を運用する投資信託会社、投資信託の資産を管理する信託銀行、投資信託の販売窓口となる販売金融機関の3者で分ける報酬です。純資産から一定率を差し引く形のため、純資産総額が小さいと、金額ベースで受け取れる額が減ってしまいます。

受け取れる信託報酬の額が小さく、その投資信託を運用するのにかかるコストを下回るようになると、運用を続ければ続けるほど投資信託会社の赤字がかさんでいくことになります。そのため、繰上償還されるケースがあるのです。

繰上償還されると、償還日の基準価額で計算された償還金が戻ってくるのですが、償還日時点の基準価額が購入時点のそれに比べて値下がりしていると、損失が実現してしまいます。

投資信託は、基準価額が下落していたとしても、解約しない限り、損失はあくまでも評価損であり、基準価額の回復によって損失が埋められる可能性があるのですが、その可能性がゼロになってしまうのです。