転職にはやはりリスクが伴います。安易に転職に踏み切る前に、今の職場で人間関係を改善することを試みてはいかがでしょうか。

自分から歩み寄って積極的にコミュニケーションをとっても人間関係が改善されないのであれば、部署異動を願い出る手もあるでしょう。

「人間関係がいい会社に転職したい」の落とし穴

人間関係に不満を抱いて転職活動をする方は、やはり転職先の条件として「人間関係の良さ」を重視する傾向があります。ところが、ここにも落とし穴があります。

よく起こりがちな「こんなはずじゃなかった」のケースを挙げてみましょう。

面接で直属の上司となる人と意気投合し、『この人と一緒に働きたい!』と思い、入社。ところが、その人はしばらくすると退職してしまった……。


面接で会った管理職に魅力を感じ、入社。ところが、その人とは別の部署に配属された。配属先の上長は、自分が苦手とするタイプだった……。
採用ページでうたわれている「社員みんな仲が良い」という風土に魅力を感じ、入社。けれど自分は既存社員とはタイプ・志向が異なり、話が合わずに浮いてしまった……。

つまり、人間関係を軸に転職先を選んでも、「入社してみないとわからない」のが現実なのです。

だからこそ、転職先を選ぶ条件は、人間関係だけでなく、「自分の強みを活かせる・伸ばせるか」「将来目指す自分像に近づけるか」といったキャリアビジョンを軸に選んでいただきたいと思います。

とはいえ、もちろん人間関係が構築しやすい職場のほうが望ましいですよね。

応募先に入社を決めるかどうかを判断するには、「面接で話した人」などの個人にフォーカスするのではなく、「社風がフィットするかどうか」を見極めましょう。

例えば、企業SNSなどでは、公式サイトの情報からはわからない内部の雰囲気や社員の志向性を感じとることができます。

また、選考プロセスのどこかで、入社後に一緒に働く人たちと話す機会を設けてもらうと、組織全体の雰囲気がつかめるでしょう。

構成=青木典子

森本 千賀子(もりもと・ちかこ)
morich 代表取締役 兼 オールラウンダーエージェント

1970年生まれ。93年リクルート人材センター(現リクルート)入社。2017年morich設立、CxOレイヤーの採用支援を中心に、企業の課題解決に向けたソリューションを幅広く提案。NPO理事や社外取締役・顧問等も務め、パラレルキャリアを体現した多様な働き方を実践。NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」出演。日経オンライン等のWeb連載のほか『本気の転職』等著書多数。2022年2月、日経新聞夕刊「人間発見」の連載にも取り上げられる。二男の母。