「神戸市東灘区に、灘中学への合格率が抜群に高い公立小学校があります。関西のお金持ちの中には、わざわざその小学校がある校区に引っ越して、子供を通わせる親もいます。これは校区を買うようなものです。上流は大きな家に住むため(図6)、住居取得や賃貸のコストは馬鹿にならない。下流には、とても真似のできない教育投資ですね」(森氏)

スキルアップのための支出も上流のほうが上であることを考えると、子供にも自分にも教育熱心な上流の姿が浮かび上がってくる。

住居の大きさは、自動車の所有率にも影響を与える。自宅に車庫があったり、駐車場代を払う余裕のある上流は、9割近くの人が自動車を所有。一方、下流は7割を切った(図7)。当然、自動車関連の支出も上流のほうが高い(図5)。

意外だったのは、ファストファッションやファストフードなど、デフレに強いといわれる店舗の利用頻度だ。高額商品である自動車と対照的に、低価格路線の店舗は下流ほど利用回数が多いと予想していたが、実際は上流ほど足繁く通っている(図8・9・10)。ユニクロ、マクドナルド、サイゼリヤといった、デフレ経済下の代表的な勝ち組企業の店舗により多く足を運んでいるのは、意外にも下流ではなく上流なのだ。今回の調査では、吉野家や餃子の王将でも同様の傾向が見てとれた。電通ソーシャル・プランニング局の袖川芳之氏は、この逆転現象を次のように解説する。