新卒女性の危機意識は半端ではない

収入を上げるには会社の中で頭角を現し、出世することが求められるが、前出のキャリタスの調査では、女性の20.0%が「出世したいと思わない」、38.4%が「特に考えていない」と答えるなど出世意欲は低い。また、入社する企業の勤務予定期間では10年以内の回答が53.3%も存在し、その多くは転職すると答えている。

出世する、管理職になることは、会社という組織を代表することであり、会社への信頼感や帰属意識を意味する。しかし信頼感や帰属意識は少なく、転職も選択肢であると考えている一方で「自分を成長させたい」と思っている。つまり、転職しても世間に通用するスキルを身に付けたいという志向が強い世代でもある。その背景には、一つの会社に依存し、定年まで勤めることは幻想にすぎず、むしろリスクでもあると捉え、個人としてサバイブしていくしかないという彼女たちの不安や危機感の表れでもある。

これは「安定した生活を送りたい」ことと矛盾しない。安定した生活とは、会社に守られる生活ではない。どんな状況に陥っても、培った経験やスキルを武器に乗り越え、一定の収入を得られる生活という意味であろう。そういう意味では彼女たちの危機意識は半端ではない。

結婚すら、リスク要因

彼女たちにとっては結婚すらリスク要因であり得る。ましてや子どもを持つことも大きなリスクとして意識されている。それが冒頭の「子どもを持ちたくない」女性が20.8%という数字にも表れている。子どもを産むことでキャリアの断絶を強いられ、フルタイム正社員での復職が難しいと予測すれば、持ちたくても持たないことを選択する女性が増えるかもしれない。少子化の原因は実に根深い。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。