施策間の連携・一貫性が重要

また、何らかの施策で成果を出そうとする場合、施策間の連携や訴求の一貫性は重要です。たとえば、商品・サービスが提供する本質的な価値とずれているけれど、上手に煽ったPRや広告を大規模に展開すれば、新規顧客を一時的に獲得できるかもしれません。

山口義宏『マーケティング思考』(翔泳社)
山口義宏『マーケティング思考』(翔泳社)

ただ、商品体験が事前の期待とずれれば、リピート顧客にはならず、LTV(顧客生涯価値)は伸びず、顧客獲得にかかった投資を回収できないためビジネスの持続性はありません。

商品と訴求との乖離ほど極端ではなくても、訴求内容が統一されていないことも、持続性を損なう要因になります。PRでのメディア報道やインターネットのバナー広告で期待させた訴求内容と、クリックして飛んだ先のLP(ランディングページ)の訴求がまったく異なる内容であれば、その期待値を維持できず、LPでの購買への転換率は下がってしまいます。

つまり、マーケティングで良い成果を上げるには、各施策の担当者同士が連携し、役割の分断を乗り越え、双方向で意見をすり合わせて調整しないといけません。

このような施策同士の連携を実現するには、それらのメンバーを束ねる上長や、施策を外部に委託しているなら事業会社内の発注者が、その判断と連携の動きをリードすることが不可欠です。ただ、マーケティングの施策の数は増える一方で、上長や発注者が目を光らせてリードするにも限界があります。

現場同士の連携が不可欠

せめて施策間の連携は、現場の施策担当メンバー同士で自発的に気づいて連携できるような意識とスキルを持つことが、現在のマーケティングで成果を出すチームの条件といえます。

SEOの担当者だけれど、広告運用やLPに関心を持つ。マス広告担当だけれどSNSや店頭現場の販促物の知識を持つ。こういった自分の担当や専門領域以外の知識を、浅く広くでも良いので学び、協働できるチームが実際に成果を出せるチームです。

「自分の領域しか知らず、学ばない人」だらけのチームでは、成果を出しにくい時代になっているのです。

山口 義宏(やまぐち・よしひろ)
グロースX取締役COO、インサイトフォース取締役

ソニー子会社戦略コンサルティング事業部長、リンクアンドモチベーションブランド・コンサルティング・デリバリー統括などを経て、2010年にブランドコンサルティングを提供するインサイトフォースを設立。これまで上場企業100社以上のコンサルティングに携わる。2022年よりマーケティング人材育成サービスを展開するグロースXの経営に関わる。著書に『マーケティング思考』(翔泳社)などがある。