中国でコロナ感染が再拡大している。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「習近平総書記はあえて積極的な抑止策をとっていないように見える。世界中に再び感染を広げるリスクがあるが、日本にとってはチャンスでもある」という――。
2022年12月31日、新年のあいさつを発表する習近平氏。
写真=中国通信/時事通信フォト
2022年12月31日、新年のあいさつを発表する習近平氏。

「ゼロコロナ」緩和で中国国民が移動し始めた

中国は今、新型コロナウイルスの再拡大で極めて厳しい局面に直面している。

習近平指導部が続けてきた厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ政策」(中国語で「動態清零」が全面的に緩和されてから1カ月半になる。1月8日からは、中国国民の海外渡航も段階的に再開され、中国国民の出国制限や帰国後の隔離がなくなり、香港でも中国本土への渡航が1日6万人(中国籍の市民のみ)を上限に許可された。

しかし、筆者が、北京、上海、香港の識者に取材する限りでは、中国のコロナ事情は悪化の一途をたどっているというほかない。

「お金を落としてくれるのはありがたいが、正直、今は来て欲しくない」

 これは、東京・浅草の商店街で聞かれた声だが、中国政府がいくら反発しようと、日本政府は中国からの渡航者に対する水際対策を維持すべきだ。それほど中国の実情はひどい。

ほぼ国民全員が感染していてもおかしくない

「今では『もう感染した?』が日常のあいさつになっています。行動制限がなくなり、平常な生活が戻りましたが、それも一瞬。感染を恐れて街から人がいなくなりました。車での移動が増え渋滞が深刻化しています」

こう語るのは、北京に住む清華大学の研究者だ。彼によれば、清掃業者や宅配業者にも感染者が急増したため、ゴミ収集所にはゴミがあふれ宅配物も届かない毎日だという。さらに彼はこう続けた。

「北京よりも地方は医療体制が脆弱ぜいじゃく。すでに国民の80%から90%が感染しているのではないでしょうか?」

もちろん推測の域を出ないが、中国疾病予防センターの首席科学者、曽光氏も、2022年暮れの時点で、「首都・北京での感染率は80%を超えた」との見解を示している。

その中国疾病予防センターでは、日々、感染者数を公表している。ただ中国は、従来WHOなどから「実数を過少申告している」と指摘され続けてきた。加えて今は大規模なPCR検査が実施されていないため、感染がどこまで広がっているのか把握するのは困難だ。

こうしてみると、今や14億人を超える中国国民のほぼ全員が感染していると考えても差し支えないかもしれない。