最高時速は200キロ近くに

英サンデー・タイムズ紙は、問題の車両が最高時速198キロに達していたと報じている。55歳のドライバーは、ブレーキが利かなかったと証言しているという。また、警察の調査により、ドライバーは飲酒およびドラッグの影響を受けていなかったことが確認されている。

英メトロ紙によると、ドライバーは相当な恐怖を味わった模様だ。地元メディアによるインタビューの内容を基に、「ブレーキを何度も試しました」を訴えるドライバーの証言を報じている。

「元トラック運転手でしたので、坂道でブレーキが利かない場合の対処法は知っていました。ですので、車が暴走を始めると、直ちに衝突できるような障害物を探し始めたのです」
「そうしながらも繰り返しブレーキを踏み、機能が復帰して車を停車できるかやってみました」
「衝突場所のことを考えていましたが、ついにはスピードに追いつけなくなったのです」

一方のテスラ側は、ドライバーがブレーキを踏んだ形跡はないと主張し、車の不具合にまつわる「うわさ」を信じないようにと呼びかけている。同社の説明によると、監視カメラの映像ではブレーキランプが点灯しておらず、さらに同社の取得した内部データでもブレーキの使用は確認できなかったという。

インディアナポリスにあるテスラサービスセンター(2017年)
写真=iStock.com/jetcityimage
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これだけではなかった自動運転技術の不具合報告

これだけならドライバーの操作ミスも疑われるが、テスラの自動運転に関する不具合の報告は続々と発生している。

メトロ紙は「テスラのハードウエア不良が原因で事故に至ったとして同社が非難されるのは、これが初めてのことではない」と指摘する。同紙はテスラのオートパイロットなど高度運転支援システムに関し、2016年以降、37件以上の衝突事故と計17人を巻き込む死亡事故を引き起こしてきた疑いがあると報じている。

こと中国では以前から、安定して走行することのできないテスラ車を「自殺用のおもちゃ」と揶揄やゆする向きがあった。テスラ関連のニュースサイト「テスラ・ラティ」は、モデルXのブレーキが誤作動し時速100キロから突如60キロにまで減速したというオーナーがこのように呼び始めたと報じている。

テスラ中国の法務グループは、同オーナーを名誉毀損きそんで訴訟した。結果として勝訴しており、1万元(約20万円)の支払いと地元紙への公開謝罪文の掲載を勝ち取っている。

昨年の上海モーターショーでも一悶着もんちゃくがあった。会場を訪れた女性が展示中のテスラ車のルーフトップに登り、ブレーキの不具合のせいで父が事故に遭ったと訴えかけた。

タイムズ紙によるとこの一件を経て、女性とテスラ側が双方を名誉毀損で訴えた模様だ。テスラは女性が「プロの」企てに加担していると主張したが、テスラと女性の双方が公開謝罪に追い込まれている。