製造業の民主化が「新産業革命」を起こす

――工場を立ち上げるハードルも低くなったようだ。

いわゆる「マイクロ工場」が登場したからだ。3D印刷や電子組み立てに必要な高度な製造設備を、個人でも活用できるようになった。独創的なアイデアとわずかな経験があれば、パソコンのキーボードをたたくだけで、すぐに中国に組み立てラインを設置できる。大がかりな工場インフラも要らない。大量の部品在庫も抱えずに済む。

過去10年は「若者3人とパソコンさえあればインターネット企業を創業できる」時代だった。今後10年は「若者3人とパソコンさえあれば製造会社を創業できる」時代になる。製造業の“民主化”といえよう。

――「新産業革命」の時代が本格到来すると、既存秩序が破壊されそうだ。

個人的には「破壊」よりも「ビジネスチャンス」という言葉を使いたい。カギを握るのは、技術革新や製品開発、製品サポートなどの主要業務プロセスを「オープン型」にすることだ。そうすれば、ウェブ上のイノベーションを全面活用したり、コミュニティーとの協力関係を深めたりできる。

大規模な資金力や工場インフラを持たずとも、ウェブを通じてアイデアが瞬間的に工場の組み立てラインで生かされる時代になる。自宅のガレージで生まれた100万単位の独創的アイデアが直ちにマイクロ工場で製品化され、一気にグローバル市場へ放出される。その潜在的影響力を想像してほしい。ここでの主役は、小規模だが柔軟で低コストの小企業だ。

――日本は伝統的に大企業信仰が根強く、メディア業界を筆頭になお規制も多い。「新産業革命」の波に乗り遅れるという懸念は。

日本に特に問題があるとは思わない。モバイル機器への移行や多機能携帯電話の投入で世界をリードしてきた。通信の分野ではいち早くブロードバンドを普及させたし、高速無線ネットワークを構築した。どこの国にも問題がある。日本ではメディア業界に問題があるのかもしれないが、アメリカにも違う問題がたくさんある。規制があるからといって悲観する必要はない。「新産業革命」の時代にも日本は変化をリードできる気がする。

※すべて雑誌掲載当時